2022年5月23日
1.設置趣旨
2021年9月にウラン廃棄物の処分が法制化されたことにより、核燃料サイクル施設を含むすべての原子炉等規制法に基づく原子力施設からの廃棄物が(施行令31条等の条件を満たす場合に第2種廃棄物として)埋設処分可能となり、今後はステークホルダー間の社会的影響も対象とした議論に移る段階に入った。
こうした動きを背景として、提案者らは、2020~2021年度に本学会に設置された「人文・社会科学的視点から考察する自然起源放射性物質含有廃棄物の取扱い専門研究会」において、これまでは線量の予測値のみで処分の妥当性が検討されてきたウラン廃棄物について、そうした理工学的なアプローチのみでは廃棄物処分が社会に必ずしも受け入れられないとの問題意識に立ち、将来世代の視点も考慮した人文・社会科学的な視点から対応を考えることの重要性について新たに認識を共有し、具体的な提言を行うべく検討を進めてきた。
他方、比放射能濃度の高い長寿命放射性廃棄物については、どれだけの濃度の廃棄物が、どの程度の深さと規模であれば処分できるのかについて、未だ明確なコンセンサスが得られていない。ウランと同様に、従前の我が国のアプローチでは、半減期の長い放射性核種を人の生活環境から極力遠ざける措置が検討されてきたが、今後は、将来世代の被ばくを潜在被ばくとして捉え直し、その許容されるレベルを確率論的に示すことも選択肢になり得るだろう。
本専研では、こうしたアプローチが現在の地層処分の考え方と両立できるのかについて、対象をウラン廃棄物から中・高レベルを含む放射性廃棄物に拡張する形で、超長期の放射性廃棄物処分と防護の考え方に対して、発生者の課題や将来世代を含む関係者への提示・提供すべき事項について幅広く議論を展開していく。そして、この困難だが重要な問題を解決するために、超長期に及ぶ評価対象期間における様々な要因に起因する不確実性を考慮し、浅地中処分と比べ、処分深度にどのような防護性能を求めるのか、将来それが失われた時に何を求めるのか、といった論点に係る考え方を整理し、理工学的なアプローチのみならず、提案者らが検討してきた人文・社会科学的なアプローチを取入れた、より幅広い視点からの考察を行う。
より具体的には、相対的濃度の高い放射性廃棄物の安全な処分のためにどのような考え方が適用されるべきかについて、最近刊行されたNUMO包括的技術報告「わが国における安全な地層処分の実現-適切なサイトの選定に向けたセーフティケースの構築-」<https://www.numo.or.jp/technology/technical_report/tr180203.html>等に記されている現在の処分の方針や方法に関する理解を深めながら、それら技術的基盤と人文・社会科学及びリスクコミュニケーションの知見に基づき、処分深度の防護性能とその長期評価に何を求めるのかを明らかにするための検討に取り組む。その取組みを通して得られた成果は、本学会員をはじめとする放射性廃棄物処分に関心のある人々との対話を経て、放射線防護の専門家が避けては通れない対話に基づく問題解決に一つの道を提供すると期待される。
2.活動計画
全8回程度の開催を予定
第1回 キックオフ及び趣旨説明、放射性廃棄物の全体概要と現状
第2回 必要な説明すべき情報項目、専門家による招待講演及び意見交換
第3回 必要な説明すべき情報項目(続き)、委員による応答・課題出し講演
第4回~第6回 これまでの議論から課題となったトピックを集中討議
第7回~第8回 報告書案審議
3.研究会員(暫定;2022年5月31日まで募集中)
委員(主査) 保田 浩志 広島大学
委員(幹事) 麓 弘道 日本検査株式会社
委員(幹事) 齋藤 龍郎 日本原子力研究開発機構
委員 笠井 篤 元日本原子力研究所
委員 金 千皓 東京大学
委員 杉山 大輔 電力中央研究所
委員 菅原 慎悦 関西大学
委員 土田 昭司 関西大学
委員 山口 文恵 日本原子力研究開発機構
委員(企画委) 清岡 英男 東京電力ホールディングス株式会社
4.議事録