日本保健物理学会

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会長挨拶

 
  一般社団法人日本保健物理学会
会長 甲斐 倫明

 

 

放射線防護は、放射線障害を防止しリスクを低減するための知の体系を構築してきたと考えていました。しかし、チェルノブイリ事故や我が国のJCO事故の苦い経験を通して多くのことを私たちは学んできたにもかかわらず、福島事故は新たな教訓を教えてくれました。放射線防護の理論と実践のどこに不備があり、何を明らかにしていく必要があるのかを専門家集団である学会として議論し答えをだしていく責任があります。

 

事故から4年半の間に、他分野の専門家と交流する機会が多くありました。そこで見えてきたのは放射線分野の特殊性であり、他分野とのアプローチの違いでした。また、同じ放射線分野の専門家といえども、放射線の測定、線量評価から出発し、生物、健康影響、リスク、防護までの放射線影響・防護全体を誰もが等しく理解し、俯瞰することができているわけではありません。ある専門家は放射線治療法を緻密に語ることはできても、線量評価や防護には明るくない。逆に線量や防護基準を語ることができても、その背景やリスクまでを十分に説明することができないという放射線分野の中にある専門性の壁です。社会から見ると、専門家こそ客観的な知を等しく理解しているという先入観があり、現実には大きな隔たりがあったのです。

 

そこで、先ず私たちの学会が進むべき方向として、放射線分野の学会同士の連携、放射線以外の学会との連携があります。放射線分野の学会同士との連携は、放射線分野の中にある専門性の壁を乗り越えていくためのものです。放射線の専門家として、それぞれが抱える研究や実務を超えて、共有していかなければならない知と何かを議論して、放射線の基本となる知として構築していくことが求められます。防護基準の認識に大きな隔たりが問題になったように、従来のテキストや報告書から得た健康影響に関する情報や防護の理論を鵜呑みすることなく、そこに潜む問題と共に専門家が共有すべき知を探ることです。

 

一方で、放射線以外の学会との連携は、放射線の特殊性から抜け出るために、リスク関連学会や社会科学系の学会との交流を推進することで、互いの理解を促進し、新たな知の構築に役立てることです。将来の放射線防護の方向性が発見できるとすればここにあるように感じています。放射線防護の歴史は古く、その変遷の中で構築してきた知の体系が現在の放射線防護があることは確かです。医療や原子力の歴史と重なっています。今こそ、環境・安全・健康・リスクといったキーワードの下に分野を超えて共通の基盤を構築する時ではないかと考えます。

 

私たちは放射線に関するあらゆる事柄を知りたいと考えます。 そのとき、社会的なニーズに対応して問題解決に必要な科学は必然的に分野を束ねたものであり学際的となるでしょう。学際的な場として学会が果たす役割を最大限に活用して、保健物理・放射線防護の学問を進化させていきたいと考えています。

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