日本保健物理学会

HOME > 学会案内 > 自然放射性核種を含む廃棄物の放射線防護に関する専門研究会

自然放射性核種を含む廃棄物の放射線防護に関する専門研究会

更新 平成31年3月28日

 

1. 提案者名と連絡先
麓 弘道 日本検査
 
2. 提案理由
 自然放射性核種の放射線防護について、放射線審議会で平成16 年7 月22 日に「自然放射性物質の規制免除について」報告書がでているが、区分7「放射線を放出する性質等を意図して利用するために精製された核燃料物質や放射線源として使用するもの」、区分8「ラドン」は対象とされていない。その結果、区分7 では、対象となる核燃料物質(ウラン、トリウム)に対しては行為に対するBSS の免除レベルとして10μSv/年が適用されてきた。
 その一方で、核燃料物質として長期間経過した場合の子孫核種の取り扱いは未定であり、これらの子孫核種についてもBSS の免除レベルである10μSv/年を適用するのではないかという考え方が一般的である。我が国での適用例を見ると例えば旧原子力安全委員会の濃度上限値の議論では、自然ウラン核種から生成する子孫核種も含めて10μSv/年相当の濃度を議論していた。一方で、同じ旧原子力安全委員会の「第二種廃棄物埋設の事業に関する安全審査の基本的考え方」では、ウラン系列核種が主な核種となるいわゆるウラン廃棄物について、「自然起源の放射性物質を主たる組成とする放射性廃棄物であり・・・・(中略)・・・・自然環境中の放射能との関連等も考慮する必要があると考えられることから、本基本的考え方の適用対象外とする。」として、BSS の免除レベルである10μSv/年を適用することを留保している。
 ひるがえって諸外国の状況を見ると、自然放射性核種を含む放射性廃棄物は過去から現在まで安全に浅地中処分されており、これら諸外国の自然放射性核種の放射線防護に対する考え方を参考に我が国においても、自然放射性核種の放射線防護の考え方を定めていく必要がある。
 
3. 計画の概要
 本研究会では自然放射性核種の取り扱いについて過去どのように扱ってきたのか、それぞれの時代背景とともに理解した上で我が国への適用を考える。
 海外での過去から現在までの自然放射性物質の取り扱いは以下のようになる。
 
(1) 海洋投棄の時代から陸地処分の黎明期(1960 年代~1980 前後)
欧米では海洋に放射性廃棄物を処分してきた実績がある。海洋投棄といっても濃度の高い放射性廃棄物は投棄されない。ここではDeminimis の概念によりα核種という形で閾値が設定されている(5,000 Bq/g)。海洋投棄が禁止されたことから陸地処分が実施された。当初は閾値にMPC を用いた考え方を適用したりしていたが、各地で放射性物質の漏えいが発生したことから、制度の確立が急がれた。この時期にIAEA のBSS で10nCi/g 以下の自然放射性物質は放射性物質として取り扱わなくてもよいとする考え方が示された(1962 年)
 
(2) Deminimis 概念の適用から免除概念の確立まで(1980 年代)
ラテン語のDeminimis はローマ法の概念で些細なことについて、法律としないこと、あるいは法律の中で取り扱わないことを示す。欧州では10nCi/gに代わって、500Bq/g を閾値として採用した。Deminimis は規制の必要がない濃度として定義されていたが、1980 年代後半から線量で考えるべきとの考え方が主流となる。最終的に免除レベルである10μSv/年から放射能濃度を算出して、BSS に免除の濃度が掲載された。
 
(3) 陸地処分の制度化~埋設処分の実施(1980 年代~2008 年)
ウランの採鉱で生じた鉱さいの安全確保が最初にあり、続いて放射性廃棄物の処分が制度化された。この過程で自然放射性核種の濃度として10nCi/g、インベントリーとして1,000Ci が一つの尺度として用いられた。この期間に主に欧州で自然放射性核種の処分に関する議論が進んだ。例えば、フランスでは原子力の透明化を進める委員会で原子力施設と鉱さい堆積場に代表される環境保護施設との閾値をどう考えるか等の議論がなされている。
 
(4) 劣化ウランの処分制度の検討(2008 年~現在)
米国で劣化ウランを廃棄物とする考え方が定着し、濃縮施設から発生する劣化ウランを浅地中処分する検討が始まった。自然放射性核種ではあるが、ウランそのものを浅地中処分するという検討は大胆な発想に基づくものであるが、米国ではそれに向けて法制度の整備が進みつつある。
 
 本研究会では、これらの時代的な転換点でどのような議論がなされ、どのような判断のもとに自然放射性核種の放射線防護を実施してきたのか、個別具体的に検討すると共に、我が国の放射線防護制度に過去どのように反映されてきたのか、今後、どのように我が国で取り入れていくべきか、提言としてとりまとめる。
 尚、本研究会では一回放射線防護の体系に入った自然放射性核種の取り扱いならびに、鉱物、鉱石、自然放射性廃棄物を含む残さや鉱山残土等、放射線防護の体系に入っていない物質の取り扱いを対象とする。
 1 年目は諸外国の過去の自然放射性物質の取り扱いを分析し、我が国の放射線防護体系に組み込んでいく場合の課題と解決策を議論する。
 2 年目には期初に1 年目のまとめとしてシンポジウムを開催し、とともに我が国の国状に照らして海外の自然放射性物質の放射線防護の考え方を参考にしつつ、最終的に我が国に適用可能と考えられる提言を取りまとめる。
 
4. 設置予定期間 
平成29 年4 月~平成31 年3 月末(2 年間)
 
5.研究会メンバー
委 員(主査) 下 道國 藤田医科大学
委 員 岩岡 和輝 放射線医学総合研究所
委 員 大越 実

日本アイソトープ協会

委 員 国分 保訓 東京電力ホールディングス
委 員 小林 愼一 新金属協会(元・原子燃料工業)
委 員 財津 知久 日本原子力研究開発機構 
委 員 齋藤 龍郎

日本原子力研究開発機構

委 員 杉山 大輔 電力中央研究所
委 員 麓 弘道 日本検査
委 員 古田 定昭 ペスコ
委 員 吉永 信治 広島大学
委 員 米原 英典 原子力安全研究協会
オブザーバー 飯本 武志 東京大学
オブザーバー 東原 知広 原子力規制庁
オブザーバー 有賀 千暁 原子力安全研究協会
オブザーバー 角田 利晴 中部電力

 

6. 最近の活動

・第5回研究会:平成31(2019)年2月12日 開催予定(議事録

・シンポジウム:平成30(2018)年 9月20日 開催済(議事録および資料LZH)

・第4回研究会:平成30(2018)年 6月1日 開催済(議事録

・第3回研究会:平成30(2018)年1月16日 開催済(議事録
・第2回研究会:平成29(2017)年10月27日 開催済(議事録
・第1回研究会:平成29(2017)年6月29日 開催済(議事録

 

以上

戻る

一般社団法人日本保健物理学会 事務局

TEL: 03-6205-4649 / FAX: 03-6205-4659

E-mail: exec.off@jhps.or.jp

ページトップ