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非破壊検査分野等におけるエックス線作業における放射線安全教育に関する専門研究会

2024年8月11日

 

1.設置趣旨

 昨今、エックス線作業主任者が選任され作業管理等がなされている事業場においても、エックス線被ばく事故が発生している。そのためエックス線作業における放射線防護の具体的な措置を調査して、放射線業務従事者の労働安全に係る能力向上と被ばく線量低減に効果のある教育内容等を検討する必要がある。本専門委員会では作業者等への教育内容を実際に事業場に対して展開しその効果を評価することで、特に製造業、非破壊分野における放射線業務従事者への放射線安全文化のさらなる醸成につなげることを目的としている。

 提案に至った背景として、去る2021年5月29日に発生した労働者のエックス線被ばく事故発生を受け、日本保健物理学会が当該事故の社会的重要性を考慮し、関連情報の収集及び会員間の共有、並びに社会への情報発信が専門家集団としての責務であるとして、「エックス線被ばく事故検討WG」を設置したことが挙げられる。同WGでは、事故の背景と経緯、線量評価、健康影響等について情報を収集し、1)安全管理上の対策・課題、2)測定、線量推定に関する課題、及び3)社会とのコミュニケーション上の課題、を整理した。

 特に安全管理上の課題として、エックス線利用・安全管理に関する組織体制と責任の所在の明確化及び教育訓練・人材育成は、同WGの最終報告書において提言された。これらは放射線安全文化の定着とさらなる醸成に資するものであるが、それには上記の提言を具体化する事業場でのエックス線作業主任者、作業者等の取り組みの調査及び労働安全に係る能力向上に効果的な教育訓練内容の構築が不可欠である。申請者らは、提案する専門委員会の設置により、エックス線作業主任者や作業者のエックス線装置の安全管理等への取組状況、作業時の放射線防護対策の現状を調査し、実効性のある教育内容とその実施頻度等について検討を行い、作業者によるエックス線装置の安全な利用を推進し、適切な管理を実現するための実効性ある教育訓練内容に改善するものである。

 

2.活動計画

 本研究会では、製造・非破壊検査業の現場におけるエックス線装置分野において、エックス線作業主任者及び作業者のエックス線安全管理に係る取り組み状況を学会や関連団体を通じたアンケート、及び現地でのヒアリング調査により把握する。併せて、放射性同位元素等の規制に関する法律(RI規制法)による放射線取扱主任者に課されている定期的な講習、及び放射線業務従事者の再教育の内容も視野に入れて調査を進める。典型的な事業場を選定して、放射線防護対策の内容を現地調査することに合わせ、エックス線漏えい線量率の測定、エックス線エネルギー分布測定等を行い、正確な被ばく線量評価に資する基礎的なデータを得る。さらに、低エネルギーエックス線による個人の被ばく線量評価をシミュレーション計算で実施し後述の教育訓練資料へ反映する。調査結果に基づき、製造業、非破壊検査分野における放射線業務従事者への放射線安全文化のさらなる醸成につながるよう、アンケート、ヒアリング、現地調査等で得られた調査結果をもとに、エックス線作業主任者及び作業者に対する個別の教育内容を提案し、両者の内容を両輪として事業場で有機的に機能するよう実際に試行し実施頻度、内容等を検討する。

 1年目は、エックス線作業主任者及び作業者のエックス線安全管理に係る取り組み状況を学会や関連団体を通じたパイロット調査を行うことで情報収集する。情報収集では、エックス線作業主任者と作業者(実際のエックス線装置のユーザー)の安全管理に係る取り組み状況、及び放射線防護対策の現状を調査し、RI規制法における放射線取扱主任者等の定期講習等の安全管理に係る能力向上に資する取り組みを調査する。同時に、次年度以降の測定評価のための検出器の選定及び準備、並びに既知の放射線場における測定試験を行う。2年目は、1年目に実施したパイロット調査を本格的に稼働して、学会や関連団体を通じたアンケート、及び現地でのヒアリング調査を進めるとともに、事業場における漏えい線量率及びエックス線エネルギー測定の現地調査の選定、準備を進める。これらの調査結果を受けて、エックス線作業主任者と作業者に対し、別個の教育訓練内容を検討する。具体的には、エックス線作業主任者については、作業者に対する安全管理責任を喚起させ、作業者に法令・規則を守らせるための種々のツールを応用するような教育内容を加えることを検討している。作業者に対する教育訓練としては、「うっかり形」のミスの低減を狙いとしたリマインド型の教育訓練内容をベースに実効性ある内容の検討を進める。それらについて、協力を得られる事業場、業界団体等を通じた教育訓練を試行し、その効果を評価する。また、教育訓練内容に追加する形で、ベンチマーク結果として、万が一のエックス線被ばく事故時の線量評価を計算シミュレーションにより行い、教育訓練内容に反映させる。

 

 

3.研究会員

 古渡 意彦(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構) 主査

 飯本 武志(東京大学)

 五十嵐 悠(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)

 榎本 敦(東京大学)

 片岡 憲昭(東京都立産業技術研究センター)

 辻 智也(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)

 橋本 周(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)

 

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