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お知らせ

「環境中トリチウムの放射線防護に関する専門研究会」の設置について

会員各位

企画委員会

 

 このたび、専門研究会運営細則(細則第C-1-1号)第2条第3項に基づき、令和3年度に新たに設置する「環境中トリチウムの放射線防護に関する専門研究会」について通知するとともに、研究会員を募集いたします。

 研究会員として参加することを希望される学会員は、令和3年3月31日までに、当該専門研究会・提案者の柿内 秀樹 氏(環境科学技術研究所)(ckhsd@ies.or.jp)まで、その旨ご連絡いただきますようお願いいたします。

 なお、同細則第3条第1項に基づき、研究会員は学会員である必要があり、原則として他の研究会員を兼ねることはできませんのでご注意ください。

 

1.専門研究会の名称

「環境中トリチウムの放射線防護に関する専門研究会」

 

2.提案者

柿内 秀樹 氏(環境科学技術研究所)

 

3.提案理由

 現在東京電力福島第一原子力発電所では廃炉に向けて作業が進んでいるが、炉内には多くの汚染水が存在し障害となっている。炉内の汚染水は多核種除去装置により処理して、ほとんどの放射性核種を取り除くことができるが、トリチウムだけは取り除くことができず、社会的にも関心が高まっている。

トリチウムは宇宙線生成核種として天然に存在するものと人為的に生成するものが存在し、後者は大気核実験に由来するものや原子力関連施設内で生成するものや将来のエネルギー源として期待されている核融合の燃料として使用されることが見込まれている。トリチウムは半減期12.3年でβ壊変する水素の放射性同位体であり、生物への影響は少ない放射性核種とされている。トリチウムは水素とほとんど同じ挙動をすることから、水素をもつ分子や化合物に入ることができる。トリチウムは環境中では水や分子状水素、メタンなどの単純な分子から複雑な高分子化合物まで広く分布する放射性核種である。国際放射線防護委員会(ICRP)が提示しているトリチウムの化学形別の線量係数(Sv/Bq)、すなわち単位摂取放射能当たりの実効線量は吸入摂取の場合トリチウム水(HTO)の線量係数は、分子状水素(HT)の10,000倍となっている。また、HTOを経口摂取した場合、植物等と結合した有機結合型トリチウム(OBT)の線量係数はHTOの約2.3倍である。

したがって、トリチウムによる被ばく線量を評価する場合にはその化学形も十分考慮する必要がある。トリチウムの分析には時間と労力と特別な機器を必要とし、環境中のトリチウムに関して情報が十分と言えない。そこでこれまでにわかっているトリチウムの性質や環境中の挙動、その分析法等について基礎的な知見を整理し、今後生じるトリチウムに関する課題解決に向けて本学会の役割として何をすべきか、何ができるかを明らかにし、放射線防護の体型に則った現実的なアプローチを検討することを目的とする。

 

4.計画の概要

(1)トリチウムは水素の放射性同位体であり、環境中で様々な化学形で存在している。環境中のトリチウムは大気や水の動きに従って移行するがその挙動は化学形で大きく異なる。そのためトリチウムの影響評価には化学形ごとに考える必要がある。そこでトリチウムの化学形ごとの分析法を整理する。

 (2)環境中のトリチウム濃度レベルと生物に対して影響が認められる濃度水準では大きな開きがある。また水以外の化学形(例えば有機結合型トリチウム)ではその影響が大きいのではないかとの懸念をもつ人もいる。そこで環境中トリチウムの濃度レベルとトリチウムの低線量における生体影響について、これまでの知見を整理、理解を深める。

 (3)大気中核実験により大量のトリチウムが生成したが壊変と拡散により濃度が減衰し、現在の濃度水準は通常の機器分析では検出が難しいレベルとなっている。一方、原子力関連施設からもわずかにトリチウムが生成され、法規制の濃度限度(実用発電用原子炉の設置・運転等に関する規則の規定に基づく線量限度を定める告示)を確認後放出されている。周辺監視区域外の水中濃度限度は60,000 Bq/Lとされているが、飲料水についての基準は特に定められていない。原子力関連施設から発生するトリチウムを監視し、その地域的な線量を評価するには、天然トリチウムや核実験トリチウムの寄与分、および、原子力関連施設から発生するトリチウムの寄与分を弁別して評価する必要がある。しかし、核実験トリチウムの影響が低下している現在、このような詳細な分析は日常的な監視では厳しいと考えられる。そこでトリチウムに関する規制の妥当性などを現状と比較し、放射線防護の体系に則ってより現実的なアプローチを検討する。

 (4)本学会の研究発表会等開催時に学会として何ができるかを広く学会員からの提案・意見を募る場を設け、それらを集約することを検討する。

 (5)以上の(1)から(4)で得られた成果について論文、解説、資料などとして学会誌に投稿するとともに一般向けのシンポジウムの開催やパンフレットの作成等社会への還元を検討する。

 

5.予定される研究会員

委員(主査)       柿内 秀樹          環境研

委員(幹事)       赤田 尚史          弘前大学

委員               横山 須美          藤田医科大学

委員               平尾 茂一          福島大学

委員               玉利 俊哉          九州環境管理協会

委員               楢山 宝孝          青森県原子力センター

 

6.設置予定期間

 令和3年4月~令和5年3月

以上

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