ICRP 低線量および低線量率放射線による固形がんリスクに関するドラフト文書への意見募集について
2025年4月23日
国際対応委員会
現在、ICRPにおいて低線量および低線量率放射線による固形がんリスクに関する科学的根拠を評価した文書「Scientific Evidence Relevant to the Assessment of Solid Cancer Radiation Risk at Low Dose and Low Dose Rate」のドラフトが意見募集されています。
https://www.icrp.org/consultation.asp?id=AABD4A34-8877-4A67-8F88-0CC192C8AC29
主なポイントは以下のとおりです。
本報告書は、電離放射線の低線量・低線量率の生物学的影響に関する現在の科学的証拠を、低線量効果係数(LDEF)および線量率効果係数(DREF)の観点から評価したものである。本報告書では、すべての固形がんのリスクに関連するエンドポイントに関する結果を、細胞内、細胞、組織、生物、集団レベルでレビューしている。本報告書では、低線量とは100mGy未満、低線量率とは被ばくを約1時間で平均した場合、毎分0.1 mGy未満とし、低い線エネルギー付与(LET)被ばくを対象としている。
DDREF(LDEFとDREFの組み合わせ)の概念は、基本的に放射線防護の目的に適用するためのアプローチを代表するものであり、本報告書の焦点ではない。特に、このアプローチの背景にある論拠と、放射線防護体系に対するその影響については、ここでは議論しない。
体細胞突然変異、細胞形質転換、細胞遺伝学的評価項目については、DREFとLDEFの数値評価はともに約4以下である。
実験動物から得られたデータの最近のプール解析によると、寿命短縮とすべての固形がんを合わせた場合、LDEFは1に近く、DREFは1から2の間であることがほとんどであるが、腫瘍の種類によってかなりのばらつきがある。
すべての固形がんに関する疫学データの最近のメタアナリシスでは、これらの推定値に含まれる不確実性を考慮すると、DREF値は約1から3の間である。
日本の原爆被爆者の発生率および死亡率データの曲率に関する解析では、曲率の一貫した証拠が得られており、1Gyで評価した全固形がん死亡率の1Gy当たりの集団リスクは、0.01Gyで評価した集団リスクの約2倍であった。これらのデータは、全固形がんを合計したLDEFの性平均値が1-2の間であることを支持する傾向があり、異なるがん部位間のばらつきがあることを示唆している。
かなりの不確実性が残るものの、ここで得られたLDEFとDREFの値の範囲は、以前の評価で得られたものよりも狭い。本報告書の全体的な結論は、現在の科学的証拠に基づけば、LDEFとDREFの値が3よりはるかに大きくなったり、1より小さくなったりする可能性は低いというものである。これらの範囲は、本報告書で検討された様々なデータ源において、ほぼ一貫しているようである。
つきましては、当学会でも、学会員の皆様からのご意見を募集・集約し、ICRPに意見発信したいと思いますので、下記の要領でご意見をお寄せください。
意見提出先: 一般社団法人日本保健物理学会 <exec.off@jhps.or.jp>
(整理のため、メールの件名は「ICRP TG91ドラフトへのコメント」としてください。)
提出形式:エクセルに記入して送付ください。
提出締切 : 2025年5月31日(土)17:00必着
ICRPの意見公募は各個人からでも提出可能ですが、学会から意見を送ることにより、より重要なコメントとして受け取ってもらえることを期待しています。
なお、類似のご意見等を頂いた場合には、ご意見を集約させて頂く場合がありますので、どうかご了承ください。
以上