日本保健物理学会 Newsletter  論文紹介

 

 

Newsletter 20221228日号

 

健康リスク

医療被ばく

福島事故

環境影響

Association between changes in alcohol consumption before and after the Great East Japan Earthquake and risk of hypertension: A study using the Ministry of Health, Labour and Welfare National Database

H Sato, et al.

J Epidemiol. 2022, Dec.10, Online ahead of print

災害時の過剰飲酒と高血圧の関連を明らかにするため、過剰飲酒者の割合が増加したかどうか、災害後の過剰飲酒が高血圧の危険因子であるかどうかを評価した。震災前(2008-2010年)と震災後(2011-2012年)に特定健診を受けた136,404人を対象に、2012-2017年の高血圧発症のハザード比(HR)を、震災前後の飲酒状況の変化との関連で検討した。震災後、調査したすべての地域で、女性の過度の飲酒者の割合が増加した。高血圧発症の性・年齢調整HRは、震災前後の過度の飲酒がない場合と比較して、震災前の過度の飲酒で1.41、震災後の過度の飲酒で2.34、震災前後の過度の飲酒で3.98となった。震災後の過度の飲酒は、男女ともに高血圧のリスク上昇と関連する可能性があり、特に避難区域の女性ではその傾向が顕著であった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36503902/

 

Patient Exposure from Radiologic and Nuclear Medicine Procedures in the United States and Worldwide: 2009-2018

M Mahesh, AJ Ansari, FA Mettler Jr.

Radiology 2022, Dec. 13, Online ahead of print

NCRPUNSCEARの報告書のデータを用いて、2016年の米国における放射線医学・核医学研究の頻度、年間集団、一人当たりの実効線量を2009年から2018年の世界的な推定値と比較した。2016年に米国で行われた放射線、CT、歯科、核医学検査は推定69100万件であり、世界で行われた42億件の16.5%を占めた。米国の年間平均個人実効線量は2.2mSvであったのに対し、世界全体では0.56mSvであった。米国は世界の医療放射線処置と集団実効線量の大きな不釣り合いな割合を占めているが、CTの使用は米国に比べ他の国々でより多く増加している。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36511806/

 

The effect of exposure on cattle thyroid after the Fukushima Daiichi nuclear power plant accident

D Horigami, et al.

Sci Rep. 12(1):21754, 2022

原子力発電所の事故における、牛の甲状腺への総放射線被ばく量と甲状腺機能への影響を推定した。201610月までの推定外部被ばく量は1416mGy131I134Cs137Csの内部被ばく量はA牧場が858.89.7mGyB牧場が340.20.3mGyであった。被ばくした牛の甲状腺は、重量が比較的少なく、安定ヨウ素量も少なかったが、病理学的な所見は認められなかった。対照群に比べ、事故前に生まれたA農場の牛の血漿甲状腺刺激ホルモン(TSH)は高く、事故後に生まれたA農場の牛の血漿サイロキシン(T4)は高かったことから、被ばくした牛は甲状腺の活性化がわずかに進んでいることが示唆された。放射線被ばくと牛の甲状腺の間に因果関係は認められなかった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36526648/

 

Radiation dose rate effects: what is new and what is needed?

D Lowe, et al.

Radiat Env Biophys. 61, 507-543, 2022

放射線の生物学的影響を理解するための数十年にわたる研究にもかかわらず、線量率の役割についてはまだ多くの不確実性が存在する。線量率効果を探求するこれまでの研究をレビューし、重要な知見、最近の進歩、今後の研究の要件や方向性に関する展望と推奨を提供することを目的とした。分子、細胞、動物、ヒトの研究を含む包括的な研究が検討されているが、低LET放射線被曝に焦点を当て、それぞれの研究の限界と利点について考察し、将来の研究の必要性に焦点を当てた。

 

https://link.springer.com/article/10.1007/s00411-022-00996-0

 

Newsletter 20221214日号

 

健康リスク

医療被ばく

緊急時被ばく

福島事故

環境影響

循環器影響

Brain cancer after radiation exposure from CT examinations of children and young adults: results from the EPI-CT cohort study

M Hauptmann, et al.

Lancet Oncol. 2022, Dec.6;S1470-2045, Online ahead of print

欧州のEPI-CT研究は、小児および若年成人のCT検査によるがんリスクを定量化することを目的としている。本研究は脳腫瘍のリスクについてのEPI-CT研究の報告である。948 174人を同定し、そのうち658 752人(69%)が本研究の対象者であった。658 752人のうち368 721人(56%)が男性で、290 031人(44%)が女性であった。中央値で5-6年(IQR 2-4-10-1)の追跡期間中に165例の脳腫瘍が発生し、そのうち121例(73%)はグリオーマであった。5年遅れの平均累積脳線量は、全人口で 47-4 mGySD 60-9)、脳腫瘍患者では 76-0 mGy100-1) であった。すべての脳腫瘍(100mGy当たりのERR 1-2795CI0-51-2-69])およびグリオーマ(100mGy当たりのERR 1-110-36-2-59])について有意な線形線量反応関係が観察された。結果は、追跡開始を5年以上遅らせた場合、および以前に報告されていない可能性のあるがんを持つ参加者を除外した場合にも強固であった。個別の線量評価を伴うこの大規模な多施設共同研究において、CT関連放射線被曝と脳腫瘍との間に有意な線量反応関係が観察されたことは、小児CTの慎重な正当化と合理的に可能な限り低い線量の使用を強調するものである。

https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(22)00655-6/fulltext

 

Uncertainty and sensitivity analyses for the reduction factor of sheltering for radiation exposures

J Hirouchi, S Takahara, H Komagamine

J Radiol Prot. 42, 041503, 2022.

原子力発電所事故時の被ばく低減対策として、屋内退避がある。吸入被ばくに対する屋内退避の有効性は、屋内と屋外の累積放射能濃度または線量の比率として定義される低減係数で表されることが多い。室内濃度は、主に空気交換率、浸透係数、室内沈着率によって制御される。本研究では、様々な環境条件下で粒子状及び反応ガス状ヨウ素の低減係数の不確かさの範囲を検討し、低減係数の不確かさに最も影響を与えるパラメータを把握するために感度分析を行った。不確実性解析の結果から、算出された低減係数は、環境条件や住宅の気密性によって大きく変動することがわかった。古い家屋における低減係数の中央値と 95 パーセンタイルは、粒子状ヨウ素で 0.5 0.9、反応ガス状ヨウ素で 0.07 0.4 であり、これらの範囲は新しい家屋で小さくなっている。感度解析の結果、風速は低減係数を決定する最も影響力のあるパラメータであった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36347027/

 

Annual prevalence of non-communicable diseases and identification of vulnerable populations following the Fukushima disaster and COVID-19 pandemic

M Murakami, S Nomura

Int J Disaster Risk Reduct. 2023 Jan; 84:103471.

2009年から2020年までの健康保険レセプトデータを用いて、日本における福島災害とコロナウイルス病(COVID-19)発生の前後における、被災者集団の高血圧、高脂血症、糖尿病、精神障害などの主要非感染性疾患(NCD)の有病率の変化を評価した。本研究の対象者は、健康保険組合(HIS)に加入している大企業の従業員とその被扶養者である家族である。HISに属する各疾患の年齢調整済み年間有病率を用いて,イベント前後の疾患有病率の比率を算出した.福島震災後、福島県では高血圧、高脂血症、糖尿病が9年間にわたり概ね増加した。これら3つのNCDと精神疾患の有病率の増加は、男性や他の年齢層に比べ、40-74歳の女性で最も高かった。日本でのCOVID-19の発生後,4疾患すべての有病率が上昇し,039歳の男性で顕著な増加がみられた。福島原発事故の被災地におけるCOVID-19発生後のNCDの有病率の変化は、日本全体よりも小さかった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36465703/

 

Data on atmospheric 129I concentrations and 129I/137Cs ratios for suspended air particulate matter dispersed in eastern Japan just after the 2011 nuclear accident in Fukushima, Japan

M Ebihara, et al.

Data Brief. 2022 Sep 28;45:108621.

2011年の福島第一原子力発電所事故直後にエアロゾルとして環境中に飛散した129Iの大気中放射能濃度(単位:Bq/m3)は、福島県及び首都圏を含む東日本の41箇所の浮遊粒子状物質(SPM)測定地点でフィルターテープに捕集された浮遊粒子状物質(SPM)中の129Iで測定された。本研究では、920個のSPM試料について、129I137Csの大気中放射能濃度とその放射能比を求めた。これらのデータに関する科学的考察は、「Time-series variations of atmospheric 129I concentrations and 129I/137Cs ratios in eastern Japan just after the 2011 nuclear accident in Fukushima, Japan (Ebihara et al. 2022) という研究論文で述べられ、363件のデータセットが提示されている。残りの557データセットが本論文で紹介されているので、このデータ論文は元の研究論文(Ebihara et al.2022)を補うものである。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36426017/

 

Temporal Changes in Sparing and Enhancing Dose Protraction Effects of Ionizing Irradiation for Aortic Damage in Wild-Type Mice

N Hamada, et al.

Cancers(Basel). 14:3319, 2022.

医療や職業環境において循環器系への放射線照射は様々な線量率で行われる。我々は以前、5 Gyの光子照射を開始してから6カ月後の野生型マウスの大動脈の変化について、線量の緩和と増強の効果を見いだした。ここでは、さらに、照射開始後12ヶ月の変化を解析した。6ヵ月後よりも12ヵ月後の方が、定性的には類似していたが、定量的には少なかった。12ヵ月後の変化の大きさは、25分割では小さくなかったが、100分割と慢性被曝では急性被曝より小さかった。6カ月および12カ月における変化の大きさは、25分割では大きく、100分割では小さく、慢性被曝では急性被曝よりずっと小さかった。これらの所見は、線量率の単純な関数ではなく、照射後の時間に依存する形で、線量の延長が大動脈障害を変化させることを示唆している。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35884380/

 

 

Newsletter 20221124日号

 

福島事故

医療被ばく

環境影響

健康リスク

Loss of participation among evacuees aged 20-37 years in the disaster cohort study after the Great East Japan Earthquake

K Yamamoto, et al.

Sci Rep. 22 Nov 15;12(1):19600.

本研究は、2011 年の東日本大震災後、福島県健康管理調査(FHMS)の包括的健康診断を受診しなかった若年避難者 の特徴を明らかにすることを目的とした。FHMSは、2011年の東日本大震災以降、避難者の健康状態を毎年評価する前向きコホート研究として実施されている。本研究では、福島第一原子力発電所の事故により避難してきた2011年の20歳から37歳までの避難者の包括的健康診断の年間参加率に注目した。2回目の調査年以降に参加しなかった対象者の特徴を多変量ロジスティック回帰モデルで同定した。FHMS の包括的健康診断の前向き研究への参加状況は、若年層、男性、市外避難者、貧血歴、喫煙・飲酒習慣のある人で悪化していることが観察された。したがって、このコホート研究は、健康行動の悪い特定の人口集団を見落とした可能性がある。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36380078/

 

Assessment of breast dose and cancer risk for young females during CT chest and abdomen examinations

N Tamam, et al.

Appl Radiat Isot. 190:110452, 2022

本研究では、胸部および腹部CT撮影時の患者線量を測定・評価する。特に、乳房等価線量(mSv)の測定と、若年女性患者(15-35歳)の乳癌の関連リスクの推定に注目した。データは3つの病院の標準検査から得た。評価には、CT線量指数、CTDImGy)の測定値および被ばく関連パラメータを用いた。乳房線量と実効線量は、ソフトウェアを用いて外挿した。その結果、調査対象病院における同様のCT検査の平均臓器等価線量に顕著な変動が認められた。胸部の平均実効線量は7.9 mSv2.3-47.0 mSv)、腹部の平均線量は6.6 mSv3.3-27 mSv)であった。乳房の等価線量は、胸部撮影は10.21.6-33 mSv)、腹部撮影は10.12.3-19 mSSvであった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36183658/

 

Radiation dose and gene expression analysis of wild boar 10 years after the Fukushima Daiichi Nuclear Plant accident

M Morimoto, J Kobayashi, Y Kino

Sci Rep. 2022 Nov 4;12(1):18653.

2011年、福島第一原子力発電所の事故により、日本国内の広範囲な環境が放射性セシウムで汚染された。本研究は、22頭のイノシシの骨格筋における放射性セシウムの濃度と小腸におけるIFN-γ、TLR3CyclinG1の発現を評価し、兵庫県で採取したイノシシのサンプルと比較検討した。避難区域のイノシシの平均 137Cs 放射能濃度は 470Bq/kg であった。ほとんどの試料で食品の規制値を超える放射能濃度が残っていたが、事故直後の試料と比較して線量は顕著に減少した。IFN-γ の発現は、兵庫県内の試料に比べ、避難区域のイノシシで有意に高い値を示した。TLR3 の発現も上昇した。CyclinG1 の発現も高い傾向にあった。したがって、イノシシは低線量放射線の影響を受け、免疫細胞がある程度活性化された可能性がある。しかし、病理学的検査では、避難区域のイノシシの小腸に炎症性細胞の浸潤や病理学的な損傷は認められなかった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36333381/

 

Spatial distributions of and species differences in 90Sr accumulation in marine fishes from the Fukushima coastal region

H Kintsu, K Kodama, T Horiguchi

J Environ Radioact. 2022 Nov 7; Online ahead of print.

福島第一原子力発電所事故では、大量の放射性物質が海洋に放出された。20141月と7月に福島県沖で採取した底生魚の脊椎骨中の90Sr放射能濃度を調査した。福島県中部(FDNPP沖)および福島県南部(いわき市沖)で採取した魚類から高い90Sr放射能濃度が検出されたが、福島県北部(相馬市沖)では、ほとんど検出されなかった。また、90Sr放射能濃度は、エイ(Okamejei kenojei and Hemitrygon akajei: 1.1 ± 0.5 to 103.3 ± 15.1 mBq/g Ca)とヒラメ(Cynoglossus joyneri and Paraplagusia japonica: 18.5 ± 2.8 to 52.8 ± 11.3 mBq/g Ca)で他の種より高濃度であった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36356465/

 

Mortality among Tennessee Eastman Corporation (TEC) uranium processing workers, 1943-2019

JD Boice Jr, et al.

Int J Radiat Biol. 2022, 27;1-21. Online ahead of print.

193年から1947年の間に、テネシー・イーストマン・コーポレーション(TEC)で90日以上勤務した女性13,951人と男性12,699人を対象に新たな調査を実施した。空気中の測定値に基づくウラン粉塵の吸入による肺の線量を推定した。2018/2019年までの生存状態は、全米死亡インデックス、社会保障死亡インデックス、テネシー州死亡記録、オンライン公共記録データベースから入手した。解析には、標準化死亡率比(SMR)およびCox比例ハザードモデルを用いた。肺がん(SMR 1.2595 CI 1.19, 1.31n = 1654)、非悪性呼吸器疾患(NMRDs)(1.2395 CI 1.19, 1.28n = 2585)および脳血管疾患(CeVD)(1.1395 CI 1.08, 1.18n = 1945)に統計的有意差をもってSMRが観察された。肺がんについては、肺線量300mGy未満の男性に対する好ましいモデルに基づくと、100mGyにおける過剰相対率(ERR)(95CI)は、女性では0.01-0.100.12n652)、男性では -0.15-0.380.07 n1002)であった。NMRDおよび非ホジキンリンパ腫は、肺またはTLNへの推定吸収線量と関連していなかった。 放射線が肺癌のリスクを増加させるという証拠はほとんどなく、ウラン粉塵の吸入とそれに伴う数年にわたる肺組織への高LETアルファ粒子被ばくは、他の種類の被ばくに比べて肺がんを引き起こす効果が小さいことが示唆された

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35758985/

 

Newsletter 2022119日号

 

医療被ばく

健康リスク

ラドン

 

The impact of body mass index on patient radiation dose in general radiography

L Dolenc, et al.

J Radiol Prot. Accepted Manuscript online 1 November 2022

本研究の目的は、過体重および肥満患者における肥満度(BMI)がDose-Area ProductDAP)および実効線量(ED)に及ぼす影響を明らかにすることである。この研究では、胸部のPAおよび側面投影、腰椎のAPおよび側面投影、骨盤の撮影、膝のAPおよび側面投影、肩のAP投影の撮影のために紹介された597人の患者を検討対象とした。各検査について、画像サイズ、管電圧、mAs積、線源-受像器間距離およびDAPの値を収集した。BMIに基づき、患者は3群に分けられた(正常体重、過体重、肥満)。PCXMC 2.0ソフトウェアを実効線量の計算に使用した。体重過多と肥満の患者では、膝と肩の画像を除く対象としたすべての検査において、DAPの場合28.9%から275.4%まで、EDの場合11.0%から241.9%まで統計的に有意に増加することが示された。

https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/ac9f1f

 

Radiation dose rate effects: what is new and what is needed?

D Lowe, et al.

Radiat Environ Biophy. 61, 507-543, 2022

電離放射線の生物学的影響を理解するための数十年にわたる研究にもかかわらず、線量率の役割については未だに多くの不確実性が存在する。202011月にMELODIが開催した「線量付与の空間的・時間的変動の影響」に関するオンラインワークショップを契機に、ここでは、線量率効果を探求するこれまでの研究をレビューし、重要な知見、最近の進歩、今後の研究の要件や方向性に関する展望と推奨を提供することを目的とした。低線量エネルギー移動放射線被曝に焦点を当て、分子、細胞、動物、ヒトの研究を含む包括的な範囲の研究が検討されている。それぞれの研究の限界と利点が議論され、将来の研究の必要性に焦点が当てられている。

https://link.springer.com/article/10.1007/s00411-022-00996-0

 

Radiation exposure due to 222Rn, 220Rn and their progenies in three metropolises in China and Japan with different air quality levels

J Hu, et al.

J Environ Radioact. 244-245, 106830, 2022.

本研究は、北京、長春、青森において、RADUETによる222Rn220Rnの測定と、改良沈着量による222Rn220Rn子孫核種モニターによるの濃度測定、および修正定常質量バランスモデルによる屋外PM2.5濃度の室内への寄与の測定を実施した。これらの結果に基づいて、大気質レベルの異なるこれら3つの大都市における都市レベルの屋外PM2.5被ばくと屋内222Rn, 220Rn吸入被曝との関連性を予備的に検討した。屋内の平均平衡等価ラドン濃度(EERC)と平衡等価トロ ン濃度(EETC)は、北京でそれぞれ 17.2 1.1 Bq m-3, 長春で 19.4 1.3 Bq m-3, 青森で10.8 0.9 Bq m-3であった。吸入による屋内被ばく線量は、長春、北京、青森の順で、屋外222Rn濃度と同じであった。220Rnによる屋内被ばく線量は、3都市で全体の30%を占めており、屋内被ばく線量を評価する際に220Rnを無視できないことが示された。屋外由来のPM2.5濃度は屋内EETCと強い相関(r = 0.772)、屋内EERCと中程度の相関(r = 0.663)を示した。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35124392/

 

 

Newsletter 20221026日号

 

福島事故

環境影響

食品モニタリング

安定ヨウ素摂取

健康リスク

医療被ばく

Dose Estimation Model for Terminal Buds in Radioactively Contaminated Fir Trees

I. Kawaguchi, H. Kido, Y. Watanabe

J Radiat Prot Res. 47,143-151, 2022

福島第一原子力発電所事故後、発電所周辺林のモミの木の形態変化など、自然界の生物相の変化が報告され ている。本研究では、モミの木の形態形成に関わる終芽に着目し、樹木器官からの放射性核種分布測定値を用いて吸収線量率を推定する方法を開発した。モミの木の上部の3つの渦巻きについて、3次元の樹木器官からなるファントムを作成した。モンテカルロシミュレーションにより、渦巻の樹木器官における放射性核種の吸収線量率を評価した。線量評価の結果、終芽と芽鱗中の放射性核種は主にベータ線によって吸収線量率に寄与し、1年生の幹・枝および葉中の放射性核種はガンマ線によって寄与していることが示された。しかし、下部の幹・枝および葉の放射性核種からの線量寄与は無視できる程度であった。

https://jrpr.org/journal/view.php?number=1123

 

Estimation of dietary intake of 90Sr in Japan after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident: market basket study, 2013-2018

H. Nabeshi, et al.

Food Addit ContamPart A Chem Anal Control Expo Risk Asses. 2022 Oct 17, Online ahead of print

福島第一原子力発電所事故(FDNPP)のストロンチウム9090Sr)の1日摂取量と年間預託実効線量の時間的・地域的傾向を推定するため、低バックグラウンド2πガスフローカウンターを用いて市場バスケットサンプルを分析した。サンプルは2013年から2018年まで年1回、6地域から収集された。1日の推定摂取量と90Srの年間預託実効線量には、期間と地域による変動はほとんどなかった。90Srの推定最大年間預託実効線量は0.00076mSv/年であり、日本の食品における介入免除レベルである1mSv/年よりも十分に低い値であった。また、本研究で推定された90Srの一日摂取量の範囲は、FDNPP事故前に測定された一日摂取量と比較して顕著な差はなかった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36252185/

 

Simulations of radioiodine exposure and protective thyroid blocking in a new biokinetic model of the mother-fetus unit at different pregnancy ages.

A. Rump, et al.

Arch Toxicol. 96,2947-2965,2022

原子力事故が発生した場合、放射性ヨウ素が放出されると、内部被ばくによる甲状腺機能障害やがん発生のリスクを高め、特に妊娠中の女性や子どもは影響を受けやすい。そのため、安定ヨウ素剤(非放射性)を大量に投与し、放射性ヨウ素の甲状腺への取り込みを阻害するが、妊娠の様々な段階において母体および胎児の甲状腺に与えられる防護の定量的な評価は困難である。我々は、妊娠中の放射性ヨウ素について、一次動態学を用いた確立された生物動態モデルとは別の方法を採用した。甲状腺や他のいくつかの組織へのヨウ素の取り込みは飽和活性輸送によって行われるので、ミカエリス・メンテン運動論で記述される取り込み機構を統合した。もう一つの防御機構であるWollf-Chaikoff効果は、甲状腺がヨウ素で飽和したときに活性化する、ヨウ素の全純取込ブロックを加えることでシミュレートされた。このモデルの妥当性は、予測値を他のモデルの結果やまばらな経験データと比較することで確認された。モデルによれば、急性放射性ヨウ素被曝時に通常推奨される安定ヨウ素剤100mgを投与すれば、妊娠期間中、母体と胎児の甲状腺に非常に高いレベルの保護効果を与えることが分かる。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35922584/

 

Ionizing radiation exposure during adulthood and risk of developing central nervous system tumors: systematic review and meta-analysis.

J. Lopes, et al.

Sci Rep. 12:16209, 2022

小児期の電離放射線(IR)被ばくに関する多くの研究で、中枢神経系(CNS)への影響が示されているが、成人の被ばくに関する結果は一貫しておらず、系統的なレビューは行われていない。目的は、成人期/若年成人期に低-中線量(< 0.5 Gy)のIRに被ばくしたヒトの脳およびCNSの良性および悪性腫瘍のリスクに関する疫学研究の知見を統合し、証拠に基づく結論を導き出すことである。2000年から2022年までに発表された関連する疫学研究を検索するために、4つの電子データベースの系統的文献検索を行い、ハンドサーチで補完した。プールされた過剰相対リスク(ERRpooled)は,ランダム効果モデルを用いて推定した。脳/中枢神経系腫瘍については、有意な線量リスク関係は認められなかった(100 mGyでのERRpooled = - 0.01; 95% CI: - 0.05, 0.04)。我々の系統的レビューおよびメタ解析では、低~中線量のIRへの曝露とCNS腫瘍のリスクとの関連は示されなかった。組織学的情報と正確な線量評価を伴うさらなる研究が必要である。

https://www.nature.com/articles/s41598-022-20462-7

 

Deep Learning to Optimize Candidate Selection for Lung Cancer CT Screening: Advancing the 2021 USPSTF Recommendations.

JH. Lee, et al.

Radiology. 305(1):209-218, 2022

胸部X線写真に基づいて肺がん検診候補者を特定する深層学習(DL)モデルは,最近の米国以外の実世界のサンプルで外部検証を行う必要がある。健康診断サンプルにおいてDLモデルを検証し,2021年米国予防サービス専門委員会(USPSTF)勧告に対する付加的な利点を明らかにする。単施設レトロスペクティブ研究は,20041月から20186月の間に健康診断で胸部X線撮影を受けた5080歳の現在および元喫煙者の連続者を対象とした。肺癌の発生に対するモデルの受信者動作特性曲線解析および受信者動作特性曲線下面積(AUC)計算を含む識別性能を評価した。2021USPSTF勧告に対するモデルの付加価値を,肺がん包括率,CTスクリーニング候補の選択割合,陽性適中率(PPV)について検討した。外部で検証された深層学習モデルにより,低線量CT肺がん検診に関する2021年米国予防サービス専門委員会勧告に対して,肺がん罹患の包括率および陽性適中率を維持しながら検診候補者数を減らすという付加価値が示された.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35699582/

 

Newsletter 20221012日号

 

非がんリスク

福島事故

健康リスク

個人線量測定

 

A Risk Comparison of Non-cancer Mortality between Lifestyle, Socioeconomic Status, and Radiation among Japanese Nuclear Workers (J-EPISODE)

S. Kudo, et al.

Health Phys. 2022 Sep 13, Online ahead of print

本研究の目的は、低線量放射線によるがん以外の死亡率の相対リスクを、生活習慣要因(喫煙習慣など)および社会経済的地位(教育年数など)と比較することである。コホートは、2003年から2004年にかけて日本の原子力発電所作業員を対象に実施された生活習慣に関するアンケート調査に回答した男性43,692人から構成されている。欠落している質問票データは多重代入法により代入し、各変数をカテゴリー化し、参照群に対する相対リスクをポアソン回帰法により算出した。観察された人年は30万人で、平均年齢は55.2歳、平均線量は24.5mSv10年遅れの線量)であった。この解析の多くの死因について、喫煙、飲酒、受診頻度、朝食摂取、睡眠、BMIなどの生活習慣の違いで有意に高いリスクが存在したが、社会経済的地位ではほとんど認められなかった。放射線は有意に高いリスクを示さなかった。以上のことから、低線量放射線のがん以外の疾患による死亡リスクは、生活習慣によるリスクよりも小さいと考えられる。

https://journals.lww.com/health-physics/Fulltext/9900/A_Risk_Comparison_of_Non_cancer_Mortality_between.39.aspx

 

Temporal Variation of Post-Accident 129I in Atmospheric Particulate Matter Collected from an Evacuated Area of Fukushima Prefecture, Japan

H. Hasegawa, et al.

Radiat Prot Dosimetry 2022 Sep 9;198(13-15):1143-1149

福島第一原子力発電所事故に起因する大気中129Iの挙動を理解するため、FDNPP事故後の避難区域のサイトにおいて、粗粒子(>1.1μm)と微粒子(<1.1μm)からなる大気中粒子状物質(PM)サンプルの129I放射能濃度を201210月から201410月までほぼ月単位で測定した。PM中の比放射能は、FDNPP事故前に採取された土壌から報告されたバックグラウンド値のみならず、事故後の汚染土壌から報告された値よりも高い傾向にあった。PM中の総129I/127I原子比は2.0 × 10-8 から 59.8 × 10-8の範囲で、FDNPP 事故後に採取された汚染土壌の比率よりも全般的に低かった。大気中PM129I濃度および129I/127I原子比は汚染土壌のそれとは異なる特徴を示し、他の大気中PMの存在が129Iのホストとしてより重要な役割を果たすことが示唆された。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36083759/

 

Assessing the impact of different neutron RBEs on the all solid cancer radiation risks obtained from the Japanese A-bomb survivors data

L. Hafner, L. Walsh, W. Ruhm

Int J Radiol Biol. 2022 Sep 26;1-15. Online ahead of print

中性子のRBEによるリスク変動を特徴づけるモデルを開発し、全固形がんを合わせた発生リスクが、中性子RBEが高く、臓器線量タイプが異なる場合にどのように変化するかを調べた。単位臓器平均線量当たりの相加的および相乗的線形過剰リスクについて、中性子RBE10ではなく110とした場合、加重線量当たりのリスク係数が50%減少することがわかった。より高い中性子RBEを用いた場合の線量反応曲線の形状の変化について評価した。男性では、大腸線量で140、肝臓線量で100、臓器平均線量80曲率が変化し、有意に負となった。女性では、RBEがそれぞれ1108060のときにこの傾向が見られた。原爆被爆者のがんリスクデータから放射線リスクおよび線量反応形状を推定する際には、中性子RBE値の不確実性を考慮する必要がある。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36154910/

 

 

Feasibility study of computational occupational dosimetry: evaluating a proof-of-concept in an endovascular and interventional cardiology setting

U OConnor, et al.

J Radiol Prot. 42, 041501,2022

個人線量測定にはまだ大きな不確かさがあり,線量計の遵守や不正確な装着の問題が存在する。PODIUMPersonal Online Dosimetry Using Computational Methods)プロジェクトの目的は、物理的な線量計を使用せず、コンピュータシミュレーションに基づくオンライン線量測定アプリを開発することで、個人線量測定を改善することである。カメラ追跡装置、柔軟な個人用ファントム、放射線源からのデータに基づいて、職業性線量を計算した。高速モンテカルロシミュレーションコードと組み合わせることで、個人線量をリアルタイムで測定することを目的としている。本論文では、臨床現場におけるPODIUM手法の実施可能性について、検証は、アイルランドの病院において、血管外科医とインターベンショナル・カーディオロジストが患者の処置中に装着する線量計を用いて行われた。この予備調査の結果、個人線量当量Hp(10)の計算値と測定値の間に40%程度の許容できる差があることがわかったが、より複雑な症例ではより大きな偏差があり、改善が必要であることが示された。

 

https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/ac9394

 

Newsletter 2022928日号

 

福島事故

甲状腺

環境影響

食品モニタリング

低線量リスク

CT疫学

Estimation of children's thyroid equivalent doses in 16 municipalities after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident

G. Suzuki, et al.

J Radiat Res. 2022, Sep 16; rrac058, Online ahead of print

これまでの研究では、2011年の福島第一原子力発電所事故後の吸入による甲状腺等価線量(TED)を再構築するために、福島県健康管理調査(FHMS)の個人行動調査票と、大気輸送・拡散・沈着モデル(ATDM-緊急時環境線量情報予測システム(WSPEEDI)の世界版-によって7自治体で構築した時空間放射性物質データベースに基づいていた。本研究では、その方法をさらに改良し、3256枚の所在調査票を用いて、原子力発電所周辺の16市町村の子どもの吸入と摂取による複合TEDの推定を行った。推定されたTEDの分布は、いわき市、川俣町、飯舘村、南相馬市の子ども1080人の甲状腺の直接測定に基づく推定値とほぼ同じであった。1歳児のTEDの平均値は伊達市の1.3mSvから南相馬市小高区の14.9mSvまで、95%分布は伊達市の2.3mSvから浪江町の28.8mSvまで変動していた。

https://academic.oup.com/jrr/advance-article/doi/10.1093/jrr/rrac058/6701780?login=false

 

A Risk Comparison of Non-cancer Mortality between Lifestyle, Socioeconomic Status, and Radiation among Japanese Nuclear Workers (J-EPISODE)

S. Kudo, et al.

Health Phys. 2022 Sep 13, Online ahead of print.

本研究の目的は、低線量放射線によるがん以外の死亡率の相対リスクを、生活習慣要因(喫煙習慣など)および社会経済的地位(教育年数など)と比較することである。コホートは、2003年から2004年にかけて日本の原子力発電所作業員を対象に実施された生活習慣に関するアンケート調査に回答した男性43,692人から構成されている。欠損している質問票データは多重代入法により代入し、各変数をカテゴリー化し、参照群に対する相対リスクをポアソン回帰法により算出した。観察された人年は30万人で、平均年齢は55.2歳、平均線量は24.5mSv10年遅れの線量)であった。多くの死因のうち、喫煙、飲酒、受診頻度、朝食摂取、睡眠、BMIなどの生活習慣の違いによって有意に高いリスクが存在したが、社会経済的状態によるリスクはほとんど認められなかった。放射線は有意に高いリスクを示さなかった。以上のことから、低線量放射線のがん以外の疾患による死亡リスクは、生活習慣によるリスクよりも小さいと考えられる。

https://journals.lww.com/health-physics/Fulltext/9900/A_Risk_Comparison_of_Non_cancer_Mortality_between.39.aspx

 

Childhood cancer risks estimates following CT scans: an update of the French CT cohort study

A.   Foucault, et al.

Eur Radiol. 32(8),5491-5498, 2022

フランスのCTコホートの過去の解析では、小児期のCT被ばくに関連した中枢神経系(CNS)腫瘍および白血病のリスク増加の証拠は示唆されていない。本研究は、より長い追跡期間とより多くの患者サンプルサイズを持つ最新のコホートを調べた。がん罹患率、生存状態、がんの素因(PF)、および追加のCTスキャンは、外部の全国データベースを通じて収集した。累積臓器線量と性別に関連するハザード比(HR)は、Coxモデルから推定した。追跡調査終了時の平均累積線量は、脳と赤色骨髄(RBM)でそれぞれ27.7mGy10.3mGyであった。PFを持たない患者では、10mGy当たりのHRは、CNS腫瘍で1.0595CI1.01-1.09)、白血病で1.1795CI1.09-1.26)、リンパ腫で0.9695CI0.63-1.45)だった。これらの推定値は、参加病院外で行われたCTスキャンや組み入れ期間後に行われたCTスキャンを含めても変化しなかった。本研究は、PFを持たない患者のCNS腫瘍および白血病について、統計的に有意な線量反応関係を示している。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35230516/

 

The Evidence for Excess Risk of Cancer and Non-Cancer Disease at Low Doses and Dose Rates

SL. Simon, et al.

Radiat Res. 2022 Sep 22, Online ahead of print.

低線量における放射線関連の健康リスクが過剰であるかどうかは議論のあるところである。我々は、低線量(0.1 Gy未満)放射線に被ばくした多くの(主に小児あるいは胎内被曝)集団における過剰ながんリスクの証拠を提示する。さらに、生物学的機序に関するデータが入手可能であるが、これらのエンドポイントのいずれについても低線量閾値またはホルミシスという考えを支持するものではない。低線量における心臓血管疾患および白内障のリスクを示唆する新しいデータもあるが、これはあまり確立されていない。この多くの証拠は、非常に大きな線量(10mGy以上)の閾値や、被ばくによる有益な影響の可能性を示唆するものではなく、実際、統計的に適合しない。提示されたデータは、低線量被ばくが過剰ながんリスクを引き起こし、また様々ながん関連外事象の過剰リスクも引き起こす可能性を示唆している。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36136740/

 

Comprehensive analysis of a decade of cumulative radiocesium testing data for foodstuffs throughout Japan after the 2011 Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident

K. Nakamura, et al.

PLoS One, 2022 Sep.21,17(9):e0274070.

福島第一原子力発電所の事故以来、日本の食品は134,137Csのサンプリングとモニタリングが行われてきた。2012年から2021年までの日本の各会計年度(41日から331日まで)において、250万以上の食品サンプルが検査され、毎月結果が報告されている。2012年度に採取した「一般食品」5,695検体、「お茶を原材料とする清涼飲料水を含む飲料水」13検体から、それぞれ100Bq/kg10Bq/kgの許容濃度(JML)を超える検体が検出された。牛乳・乳児用食品カテゴリーでは、JML50Bq/kg)を超える試料はなかった。一般食品」カテゴリーにおけるJMLを超える食品の年間比率は0.37%~2.57%の間で変動し、2012年度が最も高かった。モニタリング報告された食材の99%以上の134,137Cs濃度は、野生キノコ、植物、動物、魚など栽培、飼料、管理が困難な食材を除き、近年はJMLを超えない低い値で推移している。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36129916/

 

Newsletter 2022914日号

 

緊急時モニタリング

福島事故

ラドン

健康リスク

AOP

 

In-situ Field Gamma Spectrometry in a Radionuclide Air Sampler

L. Lebel, et al.

Health Phys. 123, 295-304, 2022

福島第一原発事故の際に行われた現場での大気サンプリング測定は、大気サンプリングの開始が遅れたため、緊急対応者が大気中の放射性核種組成に関する情報を適時に利用することができなかった。研究の目的は、大気中のさまざまな放射性核種の濃度に関する情報をリアルタイムに近い形で提供できるシステムを開発することである。本研究におけるプロトタイプの開発は、主にCd-Zn-Teスペクトロメーターによって実現されている。放射性核種空気サンプリングシステムのプロトタイプが設計・構築された。ガンマスペクトロメトリー測定は分解能が良く、システムが自動化されているため、追加の実験室分析を待つことなく、すぐに緊急オペレーションセンターにデータを送信することができるようになる

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36049134/

 

 

Symposium on disaster-related deaths after the Fukushima Daiichi nuclear power plant accident

M. Tsuboi, et al.

J Radiol Prot. 42, 033502, 2022.

災害による死亡は、直接死と間接死に分類される。直接死は、地震、津波、放射線被ばくなど災害の直接的な物理的影響によって引き起こされる死である。間接的な死は、緊急避難、移転、避難環境、医療提供サービスの中断、心理社会的影響など、二次的な健康影響によって引き起こされるものである。また、日本では、遺族を救済する災害弔慰金制度に基づき、間接的な死亡を災害関連死と称している。東日本大震災が発生し、日本における災害関連死に関するいくつかの問題が露呈した。そこで、202221日のシンポジウムでは、今後の災害対策に向けた災害関連死に関する問題点や課題について議論した。筆者らはシンポジウムで、"揺れ " "災害の有無にかかわらず、社会・生活環境の変化が繰り返され、健康状態が悪化すること "と定義し、その概念を紹介した。また、災害弱者の方がより顕著な健康影響を受ける可能性が高いことも指摘された。このように災害関連死に関連する「揺れ」の概念を一般化することは、災害を事前に予測し、災害弱者を対象とした具体的な予防策を講じることが重要であることを示唆している。

https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/ac8bdd

 

Association between exposures to radon and γ-ray radiation and histologic type of lung cancer in Eldorado uranium mining and milling workers from Canada

LB. Zablotska, RSD Lane, K Randhawa

Cancer. 128, 3204-3216, 2022

著者らは、1932年から1980年に雇用され、1969年から1999年まで追跡調査されたエルドラド・ウラン労働者16,752人(91.6%男性)のコホートにおいて、ラドン子孫産物(RDP)曝露と肺癌発生の組織型との関連性を評価した。RDP被曝とγ線線量から組織型別肺がんリスクを推定するため、電離放射線の生物学的影響(BEIRVI型モデルを用いてポアソン回帰を行った。 肺がん罹患率は、カナダの一般男性集団と比較して、労働者において有意に高かった。すべての組織型(n = 594;扁平上皮癌34%、小細胞癌16%、腺癌17%)の肺癌の放射線リスクはRDP被曝の増加とともに増加し、線量反応に湾曲は認められなかった(100作業レベル月当たりの過剰相対リスク = 0.6195%信頼区間、0.39-0.91)。放射線リスクは組織型により差がなかった(p0.144)。最も適合度の高いBEIR VI型モデルには、曝露後経過時間、曝露率、曝露時年齢による有意な修飾作用が含まれていた。RDP被ばくのモデルにγ線量を追加すると、モデルの適合度は改善されたが、リスク推定値は変わらなかった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35766801/

 

Application of radiation omics in the development of adverse outcome pathway networks: an example of radiation-induced cardiovascular disease

O. Azmizadeh, et al.

Int J Radiat Biol. 2022 Aug 24, Online ahead of print

疫学的研究により、0.5 Gyという低線量の電離放射線に心臓が被曝すると、数十年の潜伏期間を経て心疾患および死亡のリスクが増加することが示されている。有害事象経路(AOP)の枠組みは、生物系の様々なレベルにおいて、リスク評価に関連すると思われる機構的情報をまとめ、病理学的エンドポイントに変換するための包括的なツールを提供するものである。本レビューでは、放射線誘発性心血管疾患(CVD)に関する利用可能なオミックス研究と、CVDに関する提案されているAOPへのその適用性を検討した。放射線誘発性CVDに関する利用可能なオミックスデータの多くはプロテオミクス、トランスクリプトミクス、メタボロミクスであり、エピゲノムとマルチオミクスに関するデータセットがほとんど存在しなかった。このレビューは、異なる放射線シナリオ、被曝後の時間、実験モデルに関する知識のギャップに対処するためのオミックス研究の設計が急務であることを強調するものである。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35976069/

 

International expert group collaboration for developing an adverse outcome pathway for radiation induced leukaemia

D. Klokov, et al.

Int J Radiat Biol. 2022 Sep 7, Online ahead of print

有害事象経路(AOP)の概念は、電離放射線(IR)被曝後の健康への有害事象の評価に機構論的な生物学的情報を取り入れる可能性があるとして、最近大きな注目を集めている。この研究は、特にIR誘発白血病のAOPを開発するために結成された国際専門家グループの活動を記録したものである。MELODIALLIANCEが共同で開催した国際AOPワークショップの専用セッションでグループ討議が行われ、分子的開始事象と有害事象を結びつけるいくつかの生物学的キーイベントに知識を集約することがなされた。さらに、Key Event RelationshipsKERs)を支持する証拠の重さを算出するための知識レビューを、系統的レビュー手法を用いて実施した。

https://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.1080/09553002.2022.2117873?needAccess=true

 

 

Newsletter 2022824日号

 

体内被ばく

チョルノービル事故

医療被ばく

線量評価

環境影響

福島事故

 

Methods of improving brain dose estimates for internally deposited radionuclides

RW Legette, et al.

J Radiol Prot. 2022 Jul 21;42(3).

米国放射線防護測定審議会(NCRP)は、アルファ線放出核種を中心とした内部沈着放射性核種の脳組織の線量推定を改善するための方法を検討した。本論文は、NCRPコメンタリーNo.31「内部沈着核種に対する脳線量評価のための運動学的及び解剖学的モデルの開発」の主要な知見を要約したものである。本コメンタリーでは、放射線防護と疫学で現在使用されている体内動態モデルおよび線量評価モデルのリアリティを高めることによって、脳に対する線量推定値をどの程度改善できるかを検討している。現在の元素別全身動態モデルの限界は、血液との元素交換速度が独特である脳を放射線源として明確に識別していないことである。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35785774/

 

Reliability of Questionnaire-Based Dose Reconstruction: Human Factor Uncertainties in the Radiation Dosimetry of Chernobyl Cleanup Workers

V Drozdovitch, et al.

Radiat Res. 198(2):172-180, 2022

チョルノービル事故処理の除染作業員の外部被ばくによる線量は、時間-行動に基づくRADRUE法を用いた推定が行われている。RADRUE法は、空気カーマ率、照射時間、建物や地域環境の遮蔽性を考慮した位置係数の積として線量を計算する。本研究は、作業員の被ばく線量における人的要因の不確実性を定量化することを目的として、長期間経過した後の記憶の低下による個人インタビューの誤差を評価する。「参照」線量。これは、除染作業終了直後に47人の作業者から報告された除染活動の歴史的記述を用いて計算されたものである。「現在」の線量は、47人の除染作業者と、除染作業者が指名した24人の代理人(同僚)が、除染作業から25-30年後経った、本研究の一部として最近行った個人面接で報告した情報を用いて計算した。清掃作業員と代理人の現在の線量と参照線量の比の中央値は、それぞれ1.00.56であった。本研究により、人的要因の不確実性は、ほとんどの清掃作業員の「真の」参照線量を最大3倍まで過小評価または過大評価することが明らかになった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35604875/

 

Applications of a patient-specific whole-body CT-mesh hybrid computational phantom in second cancer risk prediction

E CollitIz, et al.

Phys Med Biol. 202, Aug. 8, Online ahead of print.

患者CTデータとメッシュ型標準用計算ファントム(MRCP)を統合して作られたCT-メッシュハイブリッドファントムを用いたハイブリッドの全身リスク予測能力を患者固有の全身CTWBCT)と比較することで、二次がんリスク予測への適用の有益性を調べた。頭頸部アクティブスキャニング陽子線治療計画を7つのハイブリッドファントムとそれに対応する患者スケールのMRCPでシミュレーションし、等価線量とリスクの予測値をWBCTと比較することによって評価された。ハイブリッドがWBCTの解剖学的構造を共有しているすべてのin-field臓器について、ハイブリッドは等価線量とリスク予測の両方でスケールMRCPより良いか同等であった。out-of-fieldの臓器では、ハイブリッドの等価線量予測は、すべての比較のうち48%で患者スケールのMRCPよりれており、34%で同等、18%で劣っていた。同じ臓器のリスク評価では、ハイブリッドの予測値は、すべての比較のうち51.8%でスケール付きMRCPより優れており、28.6%で同等であり、19.6%で劣っていた。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35944528/

 

 

Ten-year trends in vertical distribution of radiocesium in Fukushima forest soils, Japan.

T Manaka, et al.

J Environ Radioact  2022 Aug 2, Online ahead of print.

福島第一原子力発電所事故により汚染された森林生態系における137Csの鉛直分布の経年変化を明らかにするため、137Csの沈着量と支配種の異なる10のサンプリング区画の森林土壌(有機物及び鉱物土壌層)中の137Csインベントリーを事故後10年まで調査した。有機物層では、137Csインベントリは指数関数的に減少しており、ほとんどのプロットで準平衡定常状態に収束するまでに時間がかかる可能性があった。鉱物土壌層では、137Csの大部分は鉱物土壌層の表層(0-5 cm)で検出された。この層では、インベントリは最初に増加し、その後比較的一定となり、ほとんどのプロットで指数関数的オフセットモデルが選択され、観測期間中に準平衡定常状態に入ることが示唆された。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35930867/

 

Contamination of sea urchin Mesocentrotus nudus by radiocesium released during the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident

MNA Rithu, et al.

PLoS One 2022 Aug 15;17(8):e0269947

本研究は、福島第一原子力発電所(FDNPP)事故で飛散した放射性物質によって、海産草食性ウニMesocentrotus nudusがどの程度放射性セシウムに汚染されたかを、福島県内の4地点(四倉および恵那の沿岸および沖合)からウニを採取し、137Csの放射能濃度がどのように変化したかを調べた。個々のウニにおける137Csの生物学的半減期(Tbio)121日から157日であった。137Csの生態学的半減期(Teco)181423日であり、FDNPPに近い場所で高かった。ウニにおけるTecoの値は、これまでの報告よりも長かった。この結果は、福島沿岸のウニの食物源は137Csの取り込みに強く影響していると推察される。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35969598/

 

Newsletter 2022810日号

 

環境影響

福島事故

健康リスク

非がん影響

Chromosomal Aberrations in Large Japanese Field Mice (Apodemus speciosus) Captured in Various Periods after Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident

N Shiomi, et al.

Radiat Res. 2022 Aug 1. Online ahead of print.

福島第一原発事故後、2012年から2016年にかけて重度汚染地域で捕獲された大型野ネズミの染色体異常の頻度について報告する。20127月と201410月に捕獲したマウスの染色体異常頻度は、非汚染対照区に生息するマウスのそれよりも有意に高かったが、20161月に捕獲したマウスの染色体異常頻度はそうでなかった。個々のマウスの染色体異常頻度は,ある線量率および累積線量で増加する傾向があった。回帰木解析により1.1mGy/day以上の線量率で慢性被ばくしたマウスや200mGy以上の積算線量で染色体異常頻度が増加することが示唆された。福島県の最も汚染がひどい地域の環境線量率およびこの地域に生息する野生マウスの被ばく線量は時間とともに減少し、その結果、事故後5年間は放射線による染色体異常は検出されないと結論した。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35913889/

 

Pregnant women's migration patterns before childbirth after large-scale earthquakes and the added impact of concerns regarding radiation exposure in Fukushima and five prefectures

Y Inoie, et al.

PLoS One 2022 Aug 1;17(8):e0272285.

本研究では、震災が妊婦の移動パターンに与えた影響と、妊婦の被ばくに対する懸念について調査した。放射線被ばくのない大規模地震として、阪神・淡路大震災(兵庫県)、新潟県中越地震、熊本地震を考慮した。震災前後3年間の年間出生数のデータを分母として、出生数100人当たりの流出率および流入率を算出した。震災前3年間を基準として、震災後の年間流出率、流入率のオッズ比を算出した。震災後、兵庫県、福島県、宮城県、熊本県で流出率のオッズ比が有意に上昇し、特に福島県では震災後3年まで有意に上昇した。残りの3県は1年後の増加が限定的であった。震災後の流入量は減少し、特に福島では震災後2年目まで大きな減少を示した。大規模地震発生後に妊婦の移動パターンが変化しており、放射線被ばくの影響が大きい可能性が示唆された。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35913902/

 

Risk of Developing Non-Cancerous Central Nervous System Diseases Due to Ionizing Radiation Exposure during Adulthood: Systematic Review and Meta-Analyses

J Lopes, et al.

Brain Sci. 2022 Jul 26;12(8):984

高線量被ばくは認知障害のリスク因子として確立されているが、成人期の低-中線量被ばくについては、研究結果に一貫性がないため、2000年から2022年までに発表された疫学研究の系統的な文献検索を行った。システマティックレビューには45件の論文が含まれ、そのうち33件が定量的メタ解析に含まれた。原爆、職業、環境、医療など、さまざまな放射線被ばくが検討された。脳血管疾患の発生率および死亡率(100 mGy当たりのERRpooled = 0.04; 95% CI: 0.03-0.05; 100 mGyでのERRpooled = 0.01; 95% CI: -0.00-0.02)およびパーキンソン病(100 mGyでのERRpooled = 0.11; 95% CI: 0.06-0.16) について線量リスク関係の増大が見られた。成人の低-中線量被ばくは、非がん性CNS疾患に影響を及ぼす可能性があることが示唆された。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35892428/

 

 

Newsletter 2022727日号

 

リスク認知

福島事故

個人線量

水晶体

甲状腺

環境動態

線量評価

 

Perceptions of Residents in Relation to Smartphone Applications to Promote Understanding of Radiation Exposure after the Fukushima Accident: A Cross-Sectional Study within and outside Fukushima Prefecture

Y Kuroda, et al.

J Radiat Prot Res. 47(2): 67-76, 2022

福島県内外の住民を対象とした横断的な調査を実施し、被ばく量説明のためのスマートフォンアプリの必要性について、住民の認識を明らかにした。201911月、福島県内400人、県外400人を対象に、Webアンケートによる調査を実施した。調査項目は、基本的な特性に加え、放射線量に対する懸念や、被ばく量を把握するためのスマートフォンアプリの利用意向などであった。福島県外では、女性の医療被ばくへの懸念は3割を超えていた。県内では、女性の医療被ばく、食品の購入、自家栽培の食品摂取が主な関心事であった。県内では、「18歳未満の子どもがいる」「測定経験」「避難経験」がアプリの利用意向と有意に関連していた。個人情報を保護しつつ、データ収集だけでなく、地域のサービス提供者と住民をつなぐ適切なアプリが期待される。

https://jrpr.org/journal/view.php?number=1114

 

Radiation exposure to the lens of the eye for Japanese nuclear power plant workers

S Yokoyama, et

J Radiol Prot. 42 031504, 2022

日本では、20214月に目の水晶体に対する放射線量規制が改正された。日本保健物理学会が作成した新しい水晶体の線量モニタリングに関するガイドラインでは,水晶体への線量が管理基準に近づくか,それを超える場合には,正確な推定のために目の近くで線量を推定することが推奨されている。しかし、原子力発電所作業者の非一様被ばくに関する情報は限られている。そこで本研究では、日本の商業用原子力発電所4施設(RWR3基、BWR3基)において、高線量率作業場の線量と作業者88名の個人線量を推定し、目の水晶体への線量と作業者の被ばく状況について分析した。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35705021/

 

An investigation into potential improvements in the design of lead glasses for protecting the eyes of interventional cardiologists

EH da Silva, et al.

J. Radiol. Prot. 42 031501, 2022

被ばくから目を保護するための鉛製メガネは広く販売されているが、目の保護効果については疑問がある。本研究では、モンテカルロ・シミュレーションを用いて、水晶体という敏感な体積を持つ眼を保護する鉛製メガネの効率性を評価した。現在,インターベンショナル・カーディオロジストに使用されているデザインは,ラップアラウンド(WA)スタイルと,サイドシールド付きのフラットフロンタルレンズを持つものの2つである.その効率に影響を与える4つの修正とともに検討された。鉛の厚さを0.4 mmから0.75 mmの間で変えても、臨床使用のシミュレーションで提供される保護にはほとんど影響がなかった。結論として、鉛製メガネ、特にWA設計のメガネの前面レンズを長くすることで、遮蔽効率を3倍にすることができ、これは0.4mm鉛当量のレンズに対しても有効である。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35654011/

 

Age-specific calibration for in vivo monitoring of thyroid: is it necessary?

R Sohrabi, et al.

Radiat Environ Biophys. 2022, Jul, 17, Online ahead of print

甲状腺131Iの放射能モニタリングに用いられる検出器の年齢別較正の違いを調べた。異なる年齢層の子供に対応した甲状腺のボクセルファントム及び計算ファントムを用いて、甲状腺モニタリングに用いられる131I検出器の校正プロセスを模擬した。検出器の計数効率は、解析的手法とモンテカルロ法(MCNPX version 2.6.0)の両方を用いて評価した。その結果、20cm離れた甲状腺の放射能評価における不確かさは、年齢別の校正を行った場合、+8%から+30%の範囲から、-6%から+15%の範囲に減少することが示された。成人の甲状腺に基づく較正を行った場合、検出器と首との距離が20cm程度になると、子供の甲状腺放射能は最大で30%過大評価され、より近い距離ではより大きな過大評価が予想された。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35842886/

 

Environmental recovery from 137 Cs contamination in Japanese coastal waters shown by comparison of temporal distributions with European seas

H Takata

J Environ Radioact. 2022 Jul, 17, Online ahead of print

チェルノブイリ原子力発電所(CNPP)事故後の欧州バルト海(半閉鎖型)及び北海・ノルウェー海(海洋開放型)と、福島原発事故後の北太平洋西部に開けた宮城、福島、茨城県沖を含む日本沿岸域における137Csの時空間分布を比較した。各事故後1-9年の実効半減期は、日本沿岸海域で最も短く(1.6-4.7)、北海で4.9年、バルト海で14.4年であり、137Cs濃度の減少は地域の地勢に大きく依存し、海水の希釈拡散効果は日本沿岸海域の方が大きかったことが示唆される。CNPP事故後30年間のデータに基づくと、欧州海域の表層水における137Csの実効半減期は8.4年から11.9年と長くなった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35858525/

 

 

Newsletter 2022713日号

 

線量計測

福島事故

環境動態

線量評価

廃棄物

 

Detection limit of electron spin resonance for Japanese deciduous tooth enamel and density separation method for enamel-dentine separation

T Oka, et al.

J Radiat Res. 2022, Jul 2, Online ahead of print

電子スピン共鳴(ESR)線量測定は,人間の歯を用いたこの手法の検出限界は56 mGyまたは67 mGyと報告されているが、福島第一原子力発電所事故後の福島県民の吸収線量はこの検出限界より低いと推定されている。本研究の目的は、事故後の福島県の子どもたちの吸収線量を評価するためには子どもの歯の検出限界を推定することである。機械的方法で分離された日本人小児の乳歯のエナメル質の検出限界は115.0 mGyと推定された。福島県内の小児から数千本の歯を採取していることから、本手法は事故後の小児の外部吸収線量を調べるために有用である。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35780302/

 

Comparison of mortality patterns after the fukushima daiichi nuclear power plant radiation disaster and during the COVID-19 pandemic

M Tsuboi, et al.

J Radiol Prot. 2022 Jun 28, Online ahead of print

福島第一原子力発電所事故では、放射線による直接的な健康被害は確認されなかったが、初期の緊急避難や移住、医療崩壊、心理・社会的健康影響などによる間接的な死亡が報告されている。原子力災害の経験を、コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの経験と比較評価した。COVID-19パンデミック時の経験と知見から、放射線災害の死亡パターンは、直接死と、需給バランスの悪化(病院レベルの問題)、医療システムの崩壊(地域レベルの問題)、基礎疾患と並行して放置による死亡、直接侵襲以外の疾患の4つの間接死の大きく5グループに分類される。両者の類似性から、放射線災害における初期緊急避難対策として、緊急被ばく医療、医療体制の確立、尊厳死の擁護の3点が優先されるべき課題であると考えられる。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35764063/

 

Specific Absorbed Fractions for Spontaneous Fission Neutron Emitters in the ICRP Reference Pediatric Voxel Phantom Series

KT Griffin, et al.

Health Phys. 2022 Jun 30, Online ahead of print

比吸収割合(SAF)は,放射性核種摂取後の内部被ばく評価のワークフローにおいて重要な要素であり,線源領域で放出された粒子エネルギーを全身の標的領域で予想される吸収線量に迅速に変換することができる。データの完全性のために,最近採用されたICRP標準小児ボクセルファントムシリーズに自然核分裂中性子放出核種用のSAFが現在必要とされている。各標準個人内に77の線源領域があり,28の放射性核種が自発核分裂で崩壊するため,完全なモンテカルロシミュレーションには多大な計算時間が必要である。この負担を軽減するために、中性子SAFの新しい推定方法が実施された。

https://journals.lww.com/health-physics/Abstract/9900/Specific_Absorbed_Fractions_for_Spontaneous.22.aspx

 

Important factors for public acceptance of the final disposal of contaminated soil and wastes resulting from the Fukushima Daiichi nuclear power station accident

M Takada, et al.

PloS One 17(6),e0269702, 2022.

福島第一原子力発電所事故後、除染で除去された土壌や廃棄物は、2045年までに福島県外で最終処分される予定である。ウェブベースのアンケート形式で選択ベースのコンジョイント分析を行い、廃棄物の除去土および焼却灰の最終処分場の選択におけるいくつかの要因の相対的重要性を調査した。その結果、住宅地から遠い場所を選ぶこと、2種類の公平性、特に分配的公平性を高く評価することがわかった。また、容積や放射能については、あまり重視されていないことがわかった。このことは、国民が最終処分場の立地の公平性を重視し、身近な場所に最終処分場が計画されることに違和感を抱いていることを示している。

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0269702

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35732077/

 

Late phase radiocesium dynamics in fukushima forests post deposition

V Yoschenko, et al.

J Environ Radioact. 2022 Jun 19, Online ahead of print

福島県の放射能汚染地域で、典型的な森林生態系における放射性セシウムの長期的な動態を調査した。山木屋村(川俣町:2014年から)、津島村(浪江町:2015年から)、富岡町(2017年から)にある6つの観測地点をモニターした。全放射性セシウムインベントリの約80%は土壌の上部5cmの層に局在しており、放射性セシウムの下方への移動はほとんど見られない。最も長いモニタリングシリーズを実施した地点(山木屋と対馬)では、放射性セシウムの期待深度と期待質量深度はそれぞれ2-3 cm5-6 kg m-2で比較的一定であった。地上バイオマス区画では、20113月に大気降下物の影響を受けた区画(古葉、小枝、外皮)で、放射性セシウム集合体移行係数が同様に減少傾向を示した。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35732077/

 

 

Newsletter 2022622日号

 

福島事故

ラドン

トロン

ラジウム

環境測定

健康リスク

 

Time-series variations in 129 I concentrations and 129I/ 137 Cs ratios in suspended particulate matter collected in eastern Japan immediately after the 2011 nuclear accident in Fukushima, Japan

M. Ebihara, et al

J Environ Radioact. 2022 Sep, Epub 2022,Jun 2

2011311日に発生した福島第一原子力発電所(FD1NPP)の事故により大気中に飛散したエアロゾル中の129I1時間ごとの大気中濃度を、福島県をはじめ、首都圏を含む東日本の41箇所のSPM測定局でフィルターテープに捕集した浮遊粒子状物質(SPM)中の129I量を測定した。原発事故後数日間にFD1NPPから放出された放射性物質が比較的放射性ヨウ素に富んでいたことが示唆されました。また、321日から楢葉町(FD1NPPの南17.5km)、322日から23日にかけて首都圏で129I/137Csの高い放射能比が測定されたが、これは既報のようにFD1NPPでこれらの日に別のタイプの放出現象が発生したことが原因である可能性がある。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35660574/

 

222 Rn and 226 Ra Concentrations in Spring Water and Their Dose Assessment Due to Ingestion Intake

R. Yamada,  et al

Int J Environ Res Public Health 19,1758,2022

222Rn226Raの濃度は、数Bq L-1以下から数千Bq L-1まで、世界中のいくつかの地下水域で観測されている。国際的には水中のこれらの濃度に対する規制が実施されているが、日本では現在のところ規制はない。しかし、日本国内でも国際的に認知された規制値を超える濃度が観測されている。本研究では、北日本の湧水中の濃度を測定し、その水の摂取による実効線量を評価した。222Rn濃度は液体シンチレーションカウンターで、226Ra濃度は化学調製後に高純度ゲルマニウム検出器で測定した。測定された222Rn濃度(=12.7 ± 6.1 Bq L-1)226Ra濃度(< 0.019-0.022 Bq L-1)は、国際機関や欧米の機関が設定した基準値を超えていないことが確認された。

本研究で得られた222Rn226Raの年間実効摂取線量を保守的に見積もると8μSvとなった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35162781/

 

Internal Exposure From Indoor Radon, Thoron and Their Progeny in Residence Around High Background Radiation Area, Phang Nga Province, Thailand

CP Rattanapongs, et al.

Radiat Prot Dosimetry 2022 Jun 10, Online ahead of print

タイ南部の旧鉱山周辺の住宅地における室内ラドン、ソロン及びその子孫核種濃度の推定に、パッシブ積分識別ラドン・ソロンモニター(Raduet)及び固体核追跡検出器付きラドン・ソロン子孫核種モニターを使用した。調査地内の吸入によるラドン・トロンとその子孫濃度をボランティア住宅で線量評価した。ICRPの最新の線量換算係数を用いたラドン・トロン、ラドン子孫菌及びトーロン子孫菌の吸入による年間実効線量は、それぞれ3.0-4.6, 2.5-3.7 及び 0.4-1.0 mSv、合計 5.9-9.0 mSvと推定された。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35679532/

 

Estimation of lung cancer deaths attributable to indoor radon exposure in upper northern Thailand

K Somsunun, et al.

Sci Rep 12,5169, 2022

タイ北部(UNT)では、肺がん罹患率がタイ国立がん研究所から頻繁に報告されている。喫煙のほかに、ラドン曝露もこの地域の高い肺がん発生率に影響を及ぼしている可能性がある。UNT8つの県にある192軒の家屋で室内ラドン濃度を測定した。室内ラドン濃度は11から405 Bq m-3の範囲であり、推定年間実効線量は0.44から12.18 mSv y-1であった。肺がん患者と健常対照者の家屋では室内ラドン濃度に有意差があった(p0.033)。我々は、この地域における肺癌死亡の26%(男性)および28%(女性)が屋内ラドン曝露に起因すると推定した。室内ラドン濃度に影響を与える他の因子として、家屋の特徴と換気が挙げられる。開放窓と壁の比率は屋内ラドンレベルと負の相関があり(B = -0.69, 95% CI -1.37, -0.02)、家屋内の寝室の位置と建築材料は相関を示さなかった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35338199/

 

 

Newsletter 202268日号

 

福島事故

環境影響

防護理論

健康リスク

線量評価

Increased abundance of a common scavenger affects allocation of carrion but not efficiency of carcass removal in the Fukushima Exclusion Zone

HC Gerke, et al.

Sci Rep. 2022 May 26;12(1):8903.

福島第一原子力発電所の事故による10万人以上の人々の避難が環境生態系プロセスにどのような影響を与えたかについて調査した研究はほとんどない。汚染にもかかわらず、一般的な腐肉食動物(イノシシ)は、避難区域内で2-3倍多く生息している。本研究は、避難とそれに伴うイノシシの増加が脊椎動物の腐肉食動物群集に与える影響を調査した。イノシシは避難区域内でより多くの死骸を除去しており、栄養分と汚染物質の分布に影響を及ぼしていた。放射性物質で汚染された生態系における腐肉食動物群集の特徴を明らかにすることで、これまで考慮されてこなかった食物網における放射性セシウムの動態の潜在的経路を説明することができる。

https://www.nature.com/articles/s41598-022-12921-y

 

New operational dose quantity ambient dose H* in the context of galactic cosmic radiation in aviation

D Matthiä, MM Meier, K Schennetten

J. Radiol. Prot. 42, 021520, 2022

国際放射線単位・測定委員会は,最近,外部被ばくに関する新たな実用量を提案した。その中で,周辺線量は,周辺線量当量に代わる実効線量の推定量となることを意図している。その定義に従えば,周辺線量の測定には,周辺線量当量よりもはるかに詳細な放射線場の知識が必要となる。本研究では,飛行高度における実用量として周辺線量を採用した場合の銀河宇宙線に関する航空分野の放射線防護への影響について,モデル計算により検討した。その結果,周辺線量は,商用航空に関連する条件下では,周辺線量当量より約10%高く,実効線量を約30%過大評価することが分かった。

https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/ac5be0

 

Mortality and cancer incidence 19522017 in United Kingdom participants in the United Kingdom's atmospheric nuclear weapon tests and experimental programmes

M Gillies and RGE Haylock

J Radiol Prot. 42, 021507, 2022

本研究は、1952年から67年にかけて行われた英国の大気圏内核実験に参加した男性の死亡率とがん罹患率を調査した。実験に参加した英国の軍人および民間人男性21 357人のコホートと、22 312人の対照群を1952年から2017年にかけて追跡調査した。実験参加者の死亡率は、すべてのがんを合わせたもの(RR 1.03, 90% CI 1.00-1.07)とすべてのがん以外の病気(RR = 1.02, 90% CI 1.00-1.05)の両方で同様のリスク上昇があった。慢性リンパ性疾患を除く白血病の発生率は、対照群に比べて相対的に上昇している証拠を示した(RR = 1.38, 90% CI 1.10-1.75, p = 0.01)。英国の核兵器実験参加者の死亡率は、対照群よりわずかに(2%)高いものの、国民集団と比較すると低率である。この差は、解析では説明できない背景特性(例:喫煙習慣、食事)のばらつきで説明できる可能性がある。

https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/ac52b4

 

 

Measurements and determinants of childrens exposure to background gamma radiation in Switzerland

CL Folly, et al.

J Radiat Res, 63, 354-363, 2022

自然ガンマ線被ばくに関連した小児のがんリスクに関する疫学研究では、地理的被ばくモデルを用いて子供の居住地での被ばく量を推定している。我々は、自然ガンマ線の個人被ばく量を測定し、それが子どもの居場所とどの程度関連しているかを調査した。子どもの被ばく量を測定するためにD-Shuttle線量計を使用し、保護者には子どもの活動を日記に書いてもらった。平均個人被ばく量は85.7nSv/h(範囲52.3nSv/h-145nSv/h)であった。被ばく量は屋内では屋外より1.077倍(95CI 1.067, 1.087)高く、建築材料や(予測)屋外線量率によって異なっていた。住居の建築材料と屋外の線量率は、子供の被ばく量を決定する重要な要因である。今後の疫学調査において、建材に関する情報を含めることが有益となる可能性がある。

https://academic.oup.com/jrr/article/63/3/354/6554946

 

 

Newsletter 2022525日号

 

福島事故

医療被ばく

防護理論

健康リスク

 

Analysis of volatile nuclides' behavior in the atmosphere released due to the FDNPP accident

H Nishiyama, et al.

J Environ Radioact. 2022 May 13; Online ahead of print

本研究では、福島第一原子力発電所事故から大気中に放出された有機物、無機物及び粒子状の131I及び132I、並びに気体及び粒子状の132Teの物理化学的過程を計算する挙動モデルを開発した。この挙動モデルを用いて、放出時のヨウ素の物理化学組成、放出時の132Te/132Iの放射能比、及び132Teの乾性沈着速度を推定した。2011314日から21日にかけて輸送された5つのプルームに対して推定を行い、先行研究で測定された値と比較することで推定値を求めた。推定の結果、放出時の有機ヨウ素分率はほとんどのプルームで0.1以下と推定されたが、314日夜に放出されたプルームでは0.3という著しく高い値が推定された。放出時の 132Te/132I 比については、ほとんどのプルームで 0.30.4 程度と推定された。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35576776/

 

 

T-shirt size as a classification for body habitus in computed tomography (CT) and development of size-based dose reference levels for different indications

X Li, D Steigerwalt, MM Rehani

Eur J Radiol. 151, 110289, 2022

本研究の目的は、ルーチンおよび臓器特異的な臨床適応のための20体のCT検査について体格に基づく基準値(50%および75%)を開発することである。成人身体CTから推定される有効径に基づいて、各撮影をXXSXSSMLXLXXLTシャツのサイズに分類した。各サイズと各検査タイプにおける放射線量指数を相関させた。Tシャツサイズで体格を表現する新しいアプローチは、簡単で直感的であるだけでなく、体格の異なる患者間の線量当量の違いを認識するためのツールを提供するものである。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35397408/

 

 

Patients undergoing multiple 18F-FDG PET/CT exams: Assessment of frequency, dose and disease classification

S Indrakanti, X Li, MM Rehani

Br J Radiol. 2022 May 5 Online ahead of print

本研究の目的 1年間に2回以上18F-FDG PET/CT検査を受けた患者の頻度、人口統計、原疾患、累積有効線量を解析することである。三次医療圏の病院で行われた後ろ向き研究で、暦年で2回以上の18F-FDG PET/CT検査を受けた患者を連続2年間同定した。相当数の患者が2回以上の18F-FDG PET/CT検査を受けており、8人に1人が累積線量100mSv以上を受けており、その中には余命の長い患者も含まれている。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35348374/

 

 

Medical Countermeasure Requirements to Meet NASA's Space Radiation Permissible Exposure Limits for a Mars Mission Scenario

VM Werneth, et al.

Health Phys. 2022 May 13 Online ahead of print

NASAは現在、宇宙飛行士のキャリアにおける癌死亡の被ばく誘発死亡リスク(REID)が、95%信頼レベルの上限で3%を超えてはならないことを要求している。火星への最短往復ミッションシナリオであっても超過する可能性があるため、宇宙飛行士のリスク予測に使われるバックグラウンド癌死亡率を減少させる作用のある医療対策(MCM)として、現在のNASAの放射線制限を満たすために必要な、より一般的な要件取り上げ感度分析行った。この研究の結果は、NASAが計画している火星ミッションの制限を満たすために必要なMCMの要件に関する重要な情報を提供する。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35551137/

 

 

Implications of Recent Epidemiological Studies for Compensation of Veterans Exposed to Plutonium

J Beya

Health Phys. 2022 May 20, Online ahead of print

本論文の目的は、2007年以降のプルトニウム作業員の疫学的結果と、米国退役軍人が癌補償を受けるための最低線量を決定するために用いられるソフトウェアプログラムNIOSH-IREP(略称IREP)が予測するリスクとを比較することである。IREPの出力と手法は、補償決定に用いられる99%信頼区間における肺癌の1Gy当たりの過剰相対リスク(ERR Gy-1)の予測に使用された。IREPによる予測値を、マヤックとセラフィールドのプルトニウム作業員の結果と比較し、別々に、またプールして比較した。

https://journals.lww.com/health-physics/Fulltext/9900/Implications_of_Recent_Epidemiological_Studies_for.11.aspx

 

 

Newsletter 2022511日号

 

防護理論

環境影響

自然放射線

線量計測

健康リスク

 

The three R's of reasonable in radiological protection: relationships, rationale, and resources

JS Wieder, T Schneider, NE Martinez

J Radiol Prot. 42, 021513, 2022

放射線防護体系に最適化の原則を適用する上で中心となるのは、一般的な状況を考慮した上で、どの程度の放射線被ばくが「合理的に達成可能な限り低い」(ALARA)と見なされるべきかを評価することである。本論文では、既存の考え方を統合して構築することにより、容易に理解でき、実行可能な「合理性」の枠組みが提案されている。各プロセスの実行と決定そのものは、必然的に一般的な状況の複雑さを保持することになる。合理的の「R」は、関係(ステークホルダー、共感、信頼)、理由(文脈、技術、倫理)、資源(技術、財政、時間)を表している。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35176730/

 

Pre- and post-accident environmental transfer of radionuclides in Japan: lessons learned in the IAEA MODARIA II programme

K Tagami, et al.

J Radiol Prot. 42, 020509, 2022

福島第一原子力発電所の事故後に得られた放射線生態学的データの国際的なレビューが、IAEAの放射線影響評価のためのモデルとデータ、フェーズIIMODARIA II)プログラムで行われた。事故前後に報告された日本の陸上及び水中環境における放射線生態学的データを検討した。本論文は、MODARIA IIにおけるデータの照合と解析の結果を要約し、日本固有のデータと過去と現代の放射線生態学的研究から得られた既存の放射線生態学的知識を比較している。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35481492/

 

 

Radiation exposure in a region with natural high background radiation originated from rare earth element deposits at Bat Xat district, Vietnam

NV Dung, et al.

Radiat Environ Biophys. 61, 309-324, 2022

ベトナム北部のバットシャット地区で希土類元素の地表鉱床が確認された。この地域の放射能レベルを評価し、住民の放射線被ばくを評価するために詳細な調査が行われた。その結果、レアアース鉱床周辺に住む最も被ばく量の多いグループの代表的な人物は、年間総実効線量が37.9 ± 10.6 mSvと高く、世界平均線量2.4 mSv y-1の約16倍を受ける可能性があることが示された。ラドン吸入は年間総実効線量の約70%に寄与し、両方のラドン同位体が大きく寄与し、地元の食品と水の摂取は総実効線量にほとんど寄与しなかった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35325277/

 

EPR dosimetry in glass: a review

A Marciniak, B Ciesielski, M Juniewicz

Radiat Environ Biophys. 61, 179-203, 2022

近年、携帯電話や時計などのガラス製携帯品に、電子常磁性共鳴(EPR) を用いた遡及的な線量測定が行われるようになった。携帯電話や腕時計のガラス部分は光に弱く、信号がフェードアウトしやすいが、1-2Gyの医療トリアージレベルの線量測定が可能である。フェージングや光の影響を適切に考慮すれば、携帯電話や時計のメガネのEPR線量測定は、放射線事故後の線量評価に使用できることがわかった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35306595/

 

Calculation of an Indicator for Early Death Using Atomic Bomb Survivors Data

M Sasaki, et al.

JRPR 47, 22-29, 2022

新たな放射線リスク指標として放射線影響の早期発症仮説を利用して、広島・長崎の寿命調査(LSS)第14報の疫学データの解析を行い、早期死亡指標(IED)を開発・算出した。IEDの定量的な値は、すべての死因で4年、すべての固形がんで7-10年と推定された。IEDは、簡便で追跡可能な方法で得られるので、放射線リスクの意味を直感的に理解するのに有利である。

https://www.jrpr.org/upload/pdf/jrpr-2021-00108.pdf

 

Flying without a Net: Space Radiation Cancer Risk Predictions without a Gamma-ray Basis

FA Cucinotta

Int J Mol Sci. 23, 4324, 2022

LET放射線の生物学的影響は低LET放射線と比較すると、質的にも量的にも違いがあるが、リスク推定は、低LET放射線の疫学、線質係数(QF)、線量・線量率効果係数(DDREF)などのガンマ線を基礎に行なっている。本研究は、高LET放射線を用いた動物実験から推定したパラメータを用いて過剰相対リスク(ERR)のトラック構造モデルを定式化し、ガンマ線データを回避したリスク予測を検討した。このERRモデルを米国集団のがんデータを用いて、宇宙飛行士の生涯リスクを予測した。このアプローチは、高LET放射線に特有の質的な影響を含みつつ、低LET放射線の不確実性を回避することができる。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9029417/

 

Reflections on effects of low doses and risk inference based on the UNSCEAR 2021 report on 'biological mechanisms relevant for the inference of cancer risks from low-dose and low-dose-rate radiation

A Wojcik

J Radiol Prot. 42, 023501, 2022

2021 UNSCEAR報告書は、疫学調査の統計的検出力が低いため、発がんリスクの程度を推測する必要がある低線量放射線の生物学的メカニズムに関する知見をまとめたものである。1994年以来4回目となるUNSCEAR報告書では、低線量被ばく後の生物学的影響について調査し、放射線誘発がんに対する線形閾値なし(LNT)線量反応の仮定を支持するかどうかを検証することを目的としている。4つの報告書の結論はすべて肯定的である。2021年版報告書の新しい点は、がんリスク推論のプロセスに着目していることである。本論文は、LNTに関する結論の影響と、生物学的研究からリスクを推論する可能性について議論した。

https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/ac591c

 

 

Newsletter 2022427日号

 

健康リスク

医療被ばく

福島事故

環境影響

Extended analysis of solid cancer incidence among the Nuclear Industry Workers in the UK: 1955-2011

N Hunter, et al.

Radiat Res. 2022 Apr 22, Online ahead of print

英国における原子力業務従事者の研究は、前回の解析(NRRW-3)よりもさらに10年間の追跡調査を追加した固形がん罹患率データの更新解析である。外部被曝のみのコホート対象者では、外部被曝線量と固形がんの間に強い相関が認められ(ERR/Sv = 0.52, 95% CI: 0.11; 0.96)、肺癌を全固形癌のグループから除外すると、外部放射線量との線形関係が証明され(ERR/Sv = 0.24, 95% CI: 0.01; 0.49)、喫煙による交絡がある程度あることが示唆された。大腸癌、膀胱癌および胸膜癌では、線量とともに統計的に有意な増加傾向がみられた。これらの結果の中には他の研究からの証拠が限られていて慎重に扱うべきものもあり、より確定的な推論を行うためには、内部被曝線量および喫煙などの非放射線因子に関する情報が有用である。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35452522/

 

 

Communication of radiation risk from imaging studies: an IAEA coordinated international survey

J Vassileva, et al.

J Radiol Prot. 2022 Mar 23, Online ahead of print

IAEAの国際研究の目的は、画像診断部門の医療者や紹介元医師が画像診断における放射線リスクについてどれくらいの頻度で尋ねられるか、誰がリスクについて尋ねるか、専門家が定性的尺度でどれくらいの頻度で満足な回答を提供できるか、定量的リスク推定がどの程度必要か、画像診断による放射線リスクのコミュニケーションに関する側面を理解することにある。4大陸63か国386名の医療専門家が10問からなるウェブ上の質問項目に回答した。 その結果、放射線リスクに関連する質問は、主に患者(73.1%)と子供の両親(38.6%)が行い、78%の専門家は、これらの質問に対して、発生しそうながんの数ではなく、非常に小さい/最小、小さい、中程度といった定性的尺度で答えることができると考えていることが示された。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35320786/

 

 

Patient-specific radiation risk-based tube current modulation for diagnostic CT

L Klein, et al.

Med Phys. 2022 Apr 14, Online ahead of print

最新のCTでは患者に照射される線量を低減するために自動露出制御(AEC)技術を使用している。管電流時間積を最小化する手法(mAsTCM)であったが、本論文では、線量に敏感な臓器ごとの放射線リスクを考慮し、患者の放射線リスクを低減することを目的としたriskTCMと呼ぶ新しい方法を提案する。riskTCMは、粗いCT再構成、臓器分割、線量分布の推定がリアルタイムで提供されることを想定し、画質を一定に保ちつつ、実効線量などの患者のリスク指標を最小化する管電流曲線を決定する。平均して、胸部で約23%、腹部で約31%、骨盤で約24%、頸部で約27%の実効線量の低減が評価された。頭部については,mAsTCMと比較して,実効線量の低減率は平均で約13%と低い。リスク最小の管電流変調では、mAs最小の管電流変調と比較して、実効線量を大幅に低減することが可能である。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35421263/

 

 

Longitudinal Verification of Post-Nuclear Accident Food Regulations in Japan Focusing on Wild Vegetables

M Osanai, et al.

Foods 11(8),1151 (2022)

本研究では、地域住民にとっての山菜の重要性に着目し、福島第一原発事故から約1年後に設定された現行の基準値(一般食品100Bq/kgなど)のもと、食品規制の効果を検証した。2020年度までの基準値で250万回以上のモニタリング試験結果を用いて、内部被ばく量の変化を推定した。2012 年度は、山菜の摂取を反映しない推定線量の中央値、95%、99%は、すべての検査結果を 考慮した推定(規制なし)ではそれぞれ 0.04850.18310.6mSv/年、基準値内(規制あり)ではそれぞれ 0.0431, 0.0786, 0.236mSv/ 年となった。これらの線量は時間の経過とともに減少している。自生しており栽培管理が困難な山菜を考慮しても、適切な対策を実施することにより、日本における放射性核種に関する食の安全が確保されることが確認された。

https://www.mdpi.com/2304-8158/11/8/1151

 

 

 

Monitoring of radioactive cesium in wild boars captured inside the difficult-to-return zone in Fukushima Prefecture over a 5-year period

R Saito, et al.

Sci Rep. 12(1):5667 (2022)

2011年の福島第一原子力発電所事故後、帰還困難区域(DRZ)外のイノシシの組織サンプルは、137Csの高い放射能濃度を示す傾向があった。DRZ内部での詳細かつ長期的な研究はほとんど行われていないため、本研究はDRZ内部および周辺地域で捕獲されたイノシシから得た221個の筋肉試料中の137Cs放射能濃度を5年間にわたり測定した。その結果、DRZ内のイノシシの137Cs放射能濃度は、この区域外のイノシシの137Cs放射能濃度より高いことが示された。筋肉と土壌の137Cs濃度には有意な相関は認められなかったが、筋肉の137Cs濃度と体長および体重の間には、低濃度期には有意な相関が認められた。

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35440790/

 

 

Newsletter 2022413日号

 

非電離リスク

健康リスク

福島事故

環境影響

Cellular Telephone Use and the Risk of Brain Tumors: Update of the UK Million Women Study

J Schüz, et al.

J Natl Cancer Inst. 2022 Mar 29, Online ahead of print

携帯電話の使用と脳腫瘍の関連に関する大規模前向き研究のフォローアップを更新した。2001年に携帯電話の使用に関する質問に回答した776 156人の女性を14年間追跡した結果、携帯電話の使用歴がある場合とない場合の調整相対リスクは、すべての脳腫瘍で0.9795%信頼区間 = 0.90 1.04)、神経膠腫で0.8995%信頼区間 = 0.800.99 )で1.0と統計的に有意差なしであった。携帯電話からの高周波電磁場に最も曝されやすい脳の部位である側頭葉および頭頂葉に発生したグリオーマについては、相対リスクは1.0をわずかに下回った。本結果は、通常の条件下での携帯電話の使用は脳腫瘍の発生率を増加させないという、蓄積された証拠を支持した。

https://academic.oup.com/jnci/advance-article/doi/10.1093/jnci/djac042/6554484

 

Low-dose ionizing radiation and cancer mortality among enlisted men stationed on nuclear-powered submarines in the United States Navy

G Friedman-Jimenez, et al.

Int J Radiat Biol. 2022 Apr 4, Online ahead of print

1969年から1982年の間に米海軍の原子力潜水艦に乗船したことのある兵士85,033人を追跡しがん死亡率を調べた。線量は各人のバッジ式線量計で測定された。個人レベルでの喫煙状況は不明であったため、がんリスクは、喫煙と一貫して中等度または強い関連を示す既報の証拠があるがんとないがんとに分けて推定された。累積放射線量の平均値と中央値は、それぞれ5.7mSv1.1mSvであった(範囲:0-242 mSv)。10mSv当たりの過剰相対リスク(ERR)および95%信頼区間(CI)は、全固形癌で0.052CI -0.030.18) 、慢性リンパ性白血病以外の白血病で 0.003CI -0.290.30) であった。本研究は、海軍内職業の外部被ばく線量の質の高い測定、高い追跡割合、および線量反応解析から、低線量被ばくによる過剰がんリスクが小さいという前提に一致していた。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35316164/

 

Cancer risks among studies of medical diagnostic radiation exposure in early life without quantitative estimates of dose

M Little, et al.

Sci Total Environ. 2022 Mar 26, Online ahead of print.

放射線量の直接的な推定値が得られていない胎内あるいは小児期の医療診断被曝後のがんに関する89件の研究をレビューし、その結果を要約した。全体として、胎内における医療放射線被曝に関するこの大規模なデータ群は、小児がんの関連過剰リスクを支持するものである。しかし、研究における顕著な異質性、要約測定の意味するところの不確実性、およびバイアスの明確な可能性により、小児期の放射線画像とその後のがんリスクとの関連が放射線被ばくと因果関係があるという証拠の強さは大幅に減少している。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0048969722018162

 

 

 

Was there an improvement in the years of life lost (YLLs) for non-communicable diseases in the Soma and Minamisoma cities of Fukushima after the 2011 disaster? A longitudinal study

K Ono, M Murakami, M Tsubokura

BMJ Open. 12(4), e054716, 2022

2011年に津波と原発事故が発生した福島県相馬市と南相馬市を対象に災害前と災害後の原因別損失年数(YLL)を推計した。男性の心疾患による YLL は減少せず、震災後の YLL 0 歳で全国平均より 0.37 年長く、65 歳でその差は-0.17 年(95% 不確実性区間:-0.400.05)であった。女性では減少し、その差は0.37年(0.18-0.57年)であった。脳血管疾患の0歳時のYLLは、0.270.09-0.44)年、0.180.04-0.32)年減少したが、震災後のYLLは全国平均より男性0.24、女性0.25歳大きいままであった。がんに起因するYLLは原発事故後においても増加しなかった。本研究は地域の社会全体の健康状況がどのように変化したかを総合的な観点から把握することの重要性を強調した。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35383063/

 

 

Aggregated transfer factor of 137Cs in edible wild plants and its time dependence after the Fukushima Dai-ichi nuclear accident

M Takada, et al.

Sci Rep. 12, 5171(2022)

一般的な食用野生植物10種(多年生胞子植物4種,タケノコ,樹木2種,多年生シダ植物3種)について,集約した移行係数(Tag)を求めた。Tagの測定は2012-2019年に実施し、2012-2019年の公開データである食品モニタリングデータおよび航空機調査による総沈着量データも使用した。それぞれの種で1年間に2桁程度のTagのばらつきが見られた。これは、サンプリング地点が市町村レベルでしか特定されていないことや、沈着量データの不確実性が一因であると考えられる。各生物種のTagのばらつきは大きいが、2014年以降の各生物種のTagの平均値は、一般人の長期潜在摂取線量の推定に適用可能である。

https://www.nature.com/articles/s41598-022-09072-5

 

Temporal variability of 137 Cs concentrations in coastal sediments off Fukushima

S Suzuki, et al.

Sci Total Environ. 2022 Mar 18, Online ahead of print.

福島沖の沿岸堆積物中の137Cs濃度の時間変動を説明するために、20115月から20203月まで収集した月次モニタリングデータを解析した。堆積物中の137Cs濃度は減少傾向を示したが、非線形モデルフィッティングの結果、この減少速度は鈍化していることが示唆された。数値モデリングは、河川からの137Csの投入が沿岸堆積物中の137Cs濃度を維持することを示唆した。これらの結果は、大雨に伴う河川からの137Csの投入が、福島第一原子力発電所周辺の沿岸堆積物中の137Cs濃度を維持する主な要因であることを示している。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35314234/

 

 

Newsletter 2022323日号

 

NORM

医療被ばく

防護理論

健康リスク

Societal aspects of NORM: An overlooked research field

C Turcanu, et al.

J Environ Radioact. 244-245, April 2022.

自然起源放射性物質(NORM)の被ばくの技術的側面はよく研究されているが、NORMに関する社会科学的研究は少ない。系統的レビューを通じて、本論文は以下の問いを検討した。(a) NORMに関連する社会的課題とは何か?(b) NORMの社会的側面についてどのような科学的研究が行われているか、(c) その研究結果は特定された課題にどの程度答えているか。本研究の結果は、NORM管理の社会的、経済的、文化的側面に関する研究のギャップを示している。NORMの管理を改善するために、証拠に基づく社会科学的研究が強く必要であることを示している。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35114639/

 

Radiation Dose Reduction for 80-kVp Pediatric CT Using Deep Learning-Based Reconstruction: A Clinical and Phantom Study

Y Nagayama, et al.

AJR Am J Roentgenol. 2022 Feb 23 Online ahead of print

深層学習に基づく再構成(DLR)はCTの放射線量低減を促進する可能性がある。低管電圧小児CTにおいて、HIRMBIRと比較して、診断画質を維持しながら放射線量を低減するためにDLRを使用することができるかどうかを評価した。標準線量または低線量プロトコルで造影剤入り80kVp CTを受けた小児(6歳以下)を対象とした。低コントラスト(3.67 vs 3.57)および高コントラスト(1.20 vs 1.04)の対象に対する検出性は、4.0mGyHIRよりも2.0mGyDLRの方が高かった。低管電圧小児CTにおいて、DLRIRアルゴリズムと比較して、画質を維持したまま、あるいは画質を向上させながら、大幅な線量低減をもたらす。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35195431/

 

What's better for our health? Conducting protective actions during a nuclear emergency or accepting a certain radiation dose?

J Callen-Kovtunova, T McKenna, G Steinhauser

J Radiol Prot. 2022 Mar 9 Online ahead of print

原子力発電所の過酷事故では、大量の放射性物質が放出される可能性があるような事態を想定しているが、防護措置(例えば、避難)の利益とそのリスクとの微妙なバランスが、必ずしも適切に説明されていない。防護措置によって回避された放射線による健康影響と、防護措置に関連する健康影響とを比較する分析を実施した。その結果、多くの国で一般的に使用されている線量基準と一致する防護措置をとると、推定される放射線誘発死者数よりも多くの超過死亡が生じ、また精神的健康障害も生じる可能性があることが示された。長期滞在施設の居住者や高齢者は特に脆弱であり、一般市民の死因の相当数は緊急事態への備えの欠如と関連していることを明らかにした。

https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/ac5bde

 

Cerebrovascular Disease Mortality after occupational Radiation Exposure among the UK National Registry for Radiation Workers Cohort

CA Hinksman, RGE Haylock, M Gillies

Radiat Res. 2022 Feb 9 Online ahead of print

放射線被ばくは脳血管系に障害を与えるが、低線量慢性被ばくの影響については不確かである。本研究は、英国放射線業務従事者全国登録コホートのデータを用いて、低線量外部被ばくと脳血管疾患(CeVD)死亡率との関連性を評価する。放射線被ばく1Sv当たりのCeVD死亡の過剰相対リスク(ERR/Sv)を推定した。すべてのCeVDによる死亡のERR/Sv0.5795CI0.001.31p0.05)であった。CeVD死亡率の増加は、10-20mSvという低線量被ばく後に観察された。しかし、線形-指数モデルは線形モデルよりも有意にデータに適合していた(p0.02)。これらの結果は、他の職業コホート研究とほぼ一致しており、現行のICRP防護ガイドラインが示唆するよりも低線量でCeVDリスクを増加させる可能性があることを示唆している

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35139226/

 

 

Newsletter 202239日号

 

原爆影響

福島事故

 

Comparison of All Solid Cancer Mortality and Incidence Dose-Response in the Life Span Study of Atomic Bomb Survivors, 1958-2009

AV Brenner, et al.

Radiat Res. 2022, Feb.25, Online ahead of print

寿命調査(LSS)における全固形がん罹患率(1958-2009年)の最近の解析から、男性では線量反応関係に下に凸のカーブ(上向き曲率)が見られたが、女性では見られなかった。本研究は、同様の方法とと統計モデルを用いて、全固形癌死亡率および罹患率の線量反応関係解析を行った。女性における下に凸のカーブは、全固形癌死亡率データに特有のものであった。また、小児期または最近の追跡調査期間中に原爆に被曝した被爆者では、各死因について線量反応の湾曲が示唆された。これらの所見を総合すると、寿命調査における全固形がんの線量反応の下に凸のカーブは、男性や発生率データに特有のものではなく、その証拠は全固形がん群を構成する部位の構成と被爆時年齢または時間に依存すると思われる。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35213725/

 

Validation study of ambient dose equivalent conversion coefficients for radiocaesium distributed in the ground: lessons from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident

K Ochi, et al.

Radiat Environ Biophys. 61(1),147-159 (2022)

土壌中の放射性セシウムインベントリを環境線量当量率(空間線量率)に換算するための環境線量当量換算係数(ADCRC)は、土壌中の放射性セシウムの鉛直分布に依存している。本研究では、ADCRCの妥当性を検証するために、2011年から2019年にかけて存在する福島第一原子力発電所(FDNPS)周辺の地上1mにおける空間線量率及び土壌中の放射性セシウムの鉛直分布を測定した。土壌中の放射性セシウムの鉛直分布を表す3種類のパラメータ、(1) 緩和質量深度 (β), (2) 有効緩和質量深度 (βeff), (3) FDNPS 事故前の国際放射線単位・測定委員会が推奨する緩和質量深度 (βICRU)において、本研究の結果は、βとβeffに基づくADCRCの福島地域での適用性を支持するものである。さらに、βICRUの結果は、ADCRCの評価において、日本と海外の土壌特性の違いを考慮する必要があることを示唆している。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35201424/

 

Benthic food web structures as an explanation for prolonged ecological half-life of 137 Cs in flatfish species in the Fukushima coastal area

I Holmerin, et al.

J Enviro Radioact. 2022, Feb 21, Online ahead of print

20113月の福島第一原子力発電所事故後、2011年から2015年にかけて、底生魚の137Csは遠洋魚に比べて生態学的半減期が延長されることがわかっている。本研究では、安定同位体混合モデルと腸内内容物分析及びCs-137放射能濃度を組み合わせて、未踏の食物網構造が底生魚の137Csの生態的半減期を説明する一因となり得るという仮説を検討した。本研究の結果は、分析された底生魚に見られるCs-137放射能濃度を部分的に説明するものであり、底生魚がこの期間、底生魚のCs-137の継続的供給源となり得ることを示唆している。モニタリングプログラムを拡張し、人間の食用種ではない無脊椎動物を含めることは、適切な管理措置を講じる能力が大幅に向上すると考えられる。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35202906/

 

Young people's perspectives of thyroid cancer screening and its harms after the nuclear accident in Fukushima Prefecture: a questionnaire survey indicating opt-out screening strategy of the thyroid examination as an ethical issue

S Midorikawa and A Ohtsuru

BMC Cancer 22(1),235 (2022)

甲状腺癌の過剰診断が世界的に大きな医療問題となっている。福島の甲状腺がん検診は、原発事故後の健康政策として2011年に開始された。検診対象者が検診のデメリットを理解しているかどうかを明らかにし、参加決定に影響を与えた要因を特定するため、匿名の郵送によるアンケートを実施した。甲状腺がん検診に伴う弊害を認識していたのは16.5%に過ぎず、ほとんどの人が弊害よりも有益性が大きいと認識していた。対象者と非対象者の回答を比較したところ、両群間に有意差はなかった。検診への参加理由は、学校で実施され、義務的なものと認識されていることが最も多かった。これらの結果から、学校での検診は、検診のデメリットについての知識がないまま、オプトアウトやデフォルト設定の方法で、若者に検診が義務であると思わせることにつながるという、倫理的に重大な問題が浮き彫りになった。被験者の自律性と災害後の倫理原則に基づき、原子力災害後の調査は、学校単位のスクリーニングのようなオプトアウト方式ではなく、オプトイン方式で実施されるべきである。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35241012/

 

 

Newsletter 2022223日号

 

ラドン

健康リスク

原爆影響

福島事故

 

Radon hazard vs. radon risk - On the effectiveness of radon priority areas

E Petermann, P Bossew, B Hoffmann

J Environ Radioact.  Epub 2022 Feb4.

ラドンの健康影響は、EU基本安全基準(EURATOM-BSS Article 103/3)は加盟国にラドン優先地域の設定を法律で定めることを求めている。ラドン優先地域は、従来、屋内ラドン濃度や地中ラドンポテンシャルを用いたハザードの概念に基づいて設定されてきた。この方法は、限られた資源で多くの影響を受ける建物を見つけ、その結果、個人のリスクを減らすには効率的であるが、ハザードとリスク地域が異なる場合、集合的なリスクを減らすには非効率的である。本研究では、地質学的ラドンハザードと曝露の情報を結びつけることによって、ドイツの集合的ラドンリスクをマッピングした。その結果、影響を受ける住宅建築物の地図は、ハザードに基づく地図と比較して空間的に明確な違いを示した。ドイツでは、影響を受ける建物(すなわち、閾値以上の濃度)の大多数は、高および超高ハザード地域の外に位置していた。その結果、ドイツでは、ラドン防護の目標、すなわち個人を高線量被曝から守るとともに集団的リスクを低減するためには、ラドン政策は非常に高い危険地帯以外の地域にも対応しなければならないと結論づけた

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0265931X22000236

 

A Risk Comparison between Lifestyle, Socioeconomic Status, and Radiation A Cohort Study of Cancer Mortality among Japanese Nuclear Workers (J-EPISODE)

S Kudo, et al.

Health Phys. 2022 Feb 2, Online ahead of print

本研究は、日本の原子力発電所作業者における放射線、生活習慣(喫煙など)、社会経済的地位(教育年数など)の間で、がん死亡リスクの比較を行うことである。2003年から2004年にかけて実施された生活習慣アンケート調査に回答した日本の男性原子力発電所作業員41,742人のコホートを作成し、このコホートについて検討した。欠損値による系統的誤差を除外するため、多重代入とポアソン回帰を用いて、生活習慣、社会経済的地位、放射線に関する相対リスクと信頼区間を推定した。喫煙、飲酒、受診頻度、朝食摂取、睡眠、肥満度において有意に高い相対リスクが認められた。さらに、肺癌および喫煙関連癌では、放射線の相対リスクが有意に高いことが示された。放射線と放射線以外の要因を同時に考慮すると、放射線の相対リスクが他の要因による調整の結果となり、低線量放射線の発がんリスクは、もしあるとすれば喫煙よりも低いといえる。

https://journals.lww.com/health-physics/Abstract/9000/A_Risk_Comparison_between_Lifestyle,_Socioeconomic.99608.aspx

 

Chromosome aberrations among atomic-bomb survivors exposed in utero: updated analysis accounting for revised radiation doses and smoking

J Colongne, et al.

Radiat Environ Biophys. 2022 Feb 17, Online ahead of print

先行研究では、母親における転座と線量との明らかな関連にもかかわらず、胎内被爆者で40歳前後の時の末梢血リンパ球転座は全体として放射線量との関連は認められなかったが、データからは100mGy以下の線量で増加し、明確なピークがあることが示唆されている。胎内被爆者の解析では、染色体異常の原因として確立している喫煙行動や医療被ばくを調整していない。さらに、原爆被爆者の放射線量推定値は、その後更新され、精緻化されている。そこで、最新のDS02R1線量推定値を用いて線量反応を再推定し、被爆時の都市および近郊・遠距離の位置だけでなく喫煙についても調整した。胎内被爆者の末梢血リンパ球における転座をより詳細に解析した結果、全線量域における放射線の影響は認められなかったものの、100mGy以下の線量域で転座頻度が増加していることが確認されました。全線量反応は、採血時あるいはそれ以前の喫煙の有無とは無関係であった。

https://link.springer.com/article/10.1007/s00411-021-00960-4

 

Radiochemical analysis of the drain water sampled at the exhaust stack shared by Units 1 and 2 of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station

A Shimada, et al.

Sci Rep. 12, 2086 (2022)

2011 3 12 日、福島第一原子力発電所 1 号機の放射性ガスが 1 号機、2 号機共用の排気筒からベントラインを 介して放出された。本研究では、1号機のベント時に放出された放射性核種を調べるために、排気筒のドレンピットで採取した排水の放射化学分析を実施した。揮発性の129I, 134Cs, 137Csだけでなく、60Co, 90Sr, 125Sb、及び1号機由来の安定Mo同位体も検出された。202011月には、ヨウ素の約90%I-、約10%IO3-として存在した。さらに、129I137Csよりも多く観測され、事故時の131Iの主要な化学形態はCsIではなく分子状ヨウ素であったことが示唆された。2011311日に補正した134Cs/137Cs放射能比は0.86であり、1号機由来の環境中の放射性セシウムは、2号機及び3号機由来の放射性セシウムよりも134Cs/137Cs放射能比が小さいという結果を支持するものであった。

https://www.nature.com/articles/s41598-022-05924-2

 

Visualizing the decline of public interest in the Great East Japan Earthquake and Fukushima Daiichi nuclear power plant accident by analyzing letters to the editor in Japanese newspapers

T Hidaka, et al.

Fukushima J. Med. Sci. 68(1), 1-4 (2022)

本研究は、20113月の東日本大震災と福島第一原子力発電所(FNPP)の事故に対する国民の関心が、10年の間にどのように低下したかを明らかにすることが目的。この縦断的記述研究では、日本の三大紙(讀賣、朝日、毎日)の公式データベースを用いて、10年以内に日本で発生した東日本大震災、FNPP事故、19951月の阪神淡路大震災に言及した読者投書欄を検索した。その結果、東日本大震災や阪神淡路大震災に言及した記事は徐々に減少していた。東日本大震災とFNPP事故が日本社会に与えたインパクトは非常に大きかったが、時間の経過とともに人々の関心は薄れていた。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/fms/advpub/0/advpub_2021-18/_pdf/-char/en

 

 

Newsletter 202229日号

 

医療被ばく

線量概念

福島事故

健康リスク

 

 

Survey of the public's preferences for communication of medical radiation risk

EM Davies, et al.

J Radiol Prot. 2022 Jan 18 Online ahead of print

電離放射線(医療被ばく)規則2017を遵守するため、患者は被ばく前に医療放射線リスクについて十分な情報を得る必要がある。本研究では、放射線リスクコミュニケーションに対する患者の選好を探るために、患者および一般市民と共同で開発した質問紙を使用した。2020/4/282020/7/18の間にソーシャルメディアを通じて配布された。回答者の大多数(73%)は、1万分の1以下の発がんリスクの増加については気にしないと回答している。患者が懸念を示すリスクのレベルとリスクコミュニケーションの方法論を評価し、これらの知見と既存の文献に基づいて、モダリティに基づく放射線リスクコミュニケーションへの段階的アプローチを提案する。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35042199/

 

Conversion coefficients from total air kerma to the newly proposed ICRU/ICRP operational quantities for radiation protection for photon reference radiation qualitie

R Behrens and T Otto

J Radiol Prot. 42(1), 011519 (2022)

国際放射線単位測定委員会(ICRU)は、最近、放射線防護のための新しい実用量を提案した。ICRUは単色光子の換算係数を提供したが,国際標準化機構(ISO)がISO 4037で,国際電気標準会議(IEC)がIEC 61267で定義したX線ガンマ線に対する換算係数は提供されていない。そこで,本研究では,光子の基準放射線の線質について,全空気カーマから新たに提案する実用量への換算係数を平均化した。また,空気密度が換算係数に与える影響を判断するために必要なパラメータを決定した。最後に,新たに提案する実用量が線量計の応答性に与える影響について検討した。

https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/abc860

 

A comparative study of riverine 137Cs dynamics during high-flow events at three contaminated river catchments in Fukushima

T Niida, et al.

Sci Total Environ 2022 Jan 25, Online ahead of print

本研究は、福島第一原子力発電所事故により汚染された3つの河川流域における高流量時の河川中137Cs濃度の時間変化と海洋へのフラックスを評価した。浮遊物質から脱離した137Csの海洋への潜在的な放出量は0.022-0.57GBqと推定された。高流量時のエピソードサンプリングにより、粒子状137Csフラックスが集水域の特性に依存し、137Csの海洋への移行を制御していることが示された。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35090916/

 

Cancer risk from chronic exposures to chemicals and radiation: a comparison of the toxicological reference value with the radiation detriment

E Clero, et al.

Radiat Environ Biophys. 60(4),531-547 (2021)

本レビューは、遺伝毒性発がん性化学物質と放射線の被ばくによる発がんリスク評価における参照法を比較することを目的としたものである。化学物質は、動物実験で一般的に観察される最も感受性の高いタイプの発がんを基に、発がん性を毒性学的参照値(TRV)として表現し、実験データをヒトへの曝露に適用できるように調整したモデル化により用量反応曲線を作成する。放射線リスクモデルは、原爆疫学データから導かれる。化学的ながんリスク評価と放射線によるがんリスク評価の違いについて、データソース、低線量への外挿、線量の定義、考慮される健康影響、保守性のレベルについて議論した。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34487227/

 

 

Newsletter 2022126日号

 

福島事故

原爆影響

健康リスク

The Association between Parenting Confidence and Later Child Mental Health in the Area Affected by the Fukushima Nuclear Disaster: The Fukushima Health Management Survey

R Mizuki, et al.

Int J Environ Res Public Health 19, 476 (2022)

福島第一原子力発電所事故後、子どもの生活習慣や心の健康状態を把握するために「ふくしま健康管理調査」が実施された。調査対象者は、震災時に避難区域に住んでいた03歳の子ども1126人。多重ロジスティック分析では、子どもの性別、年齢、現在の健康状態などの共変数を調整した後、子育てに自信がないグループは、自信がある母親よりもSDQの総合困難度(OR, 2.8, 95% CI, 1.59-4.93) と登校拒否(OR = 1.98, 95% CI: 1.24-3.18) のリスクレベルが著しく高いことが示された。

https://www.mdpi.com/1660-4601/19/1/476

 

Radiation Effects on Late-life Neurocognitive Function in Childhood Atomic Bomb Survivors: A Radiation Effects Research Foundation Adult Health Study

K Ishihara, et al.

Radiat Res 2022 Jan 8, Online ahead of print

放射線治療のような小児期の高線量被ばくは認知機能低下を引き起こすが、低・中線量被ばくの認知機能への影響については十分な研究がない。小児期の原爆放射線被ばくと晩年の神経認知機能との関連を明らかにするために、NCQ4つの下位尺度(メタ認知、情動調節、意欲・組織化、処理速度)をTスコアに変換し、対照群(線量5 mGy未満)の最高10%を障害と定義した。一般化線形混合モデルを用いて、放射線被ばくがTスコアおよび障害者の割合に及ぼす影響を評価した。神経認知機能については、線量は、意欲/組織化障害割合を除いて、関連はなかった。小児期に被ばくした被爆者の後期神経認知機能は、年齢と関連していたが、線量とは明確には関連していなかった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35042238/

 

Radiation risks of lymphoma and multiple myeloma incidence in the updated NRRW-3 cohort in the UK: 19552011

N Hunter and R Heylock

J Radiol Prot 42 011517 (2022)

非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫(HL)、多発性骨髄腫(MM)を含むリンパ腫発生に対する外部放射線の影響を、第3次解析コホートに基づき、さらに10年間の追跡調査を行ったUKの全国放射線作業者登録で評価した。この研究では、1955年から2011年末までの525万人年を追跡調査した172452人(うち90%)が男性であった。NHL711例、HL113例、MM279例が登録されていた。ポアソン回帰を用いて、電離放射線の累積線量当たりの過剰相対リスクを推定した。放射線量とNHLおよびMMの発生率との間に統計的に有意な関係が見いだされた。HLについては、放射線に関連した過剰リスクの証拠はなかった。報告された関連性は、作業者のごく一部、特に累積線量が0.5Svを超える労働者に基づくものであり、慎重に扱うべきである。

https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/abee96

 

Mortality from leukemia, cancer and heart disease among U.S. nuclear power plant workers, 1957-2011

JD Boice et al.

Int J Radiat Biol 2022, Jan 12, Online ahead of print

低線量健康影響100万人調査(MPS)は慢性被曝の放射線リスクを調べることである。米国原子力規制委員会の放射線被曝情報報告システム(REIRS)およびランダウアー社の線量データベースにより、1957年から1984年に初めてモニターされた原子力発電所作業員135,193人が特定された。CLL以外の白血病の100mGy当たりの過剰相対リスク(ERR)は0.1590CI -0.001; 0.31)であった。すべての固形がんに対する100mGy当たりのERR95CI)は0.01-0.030.05)、肺がんに対しては-0.04-0.110.02)、パーキンソン病に対しては0.24-0.020.50)、およびIHDに対しては-0.01-0.060.04)であった。長期間の放射線被曝は、原子力発電所作業員においてCLL以外の白血病のリスクを増加させた。すべての固形がん、肺がん、虚血性心疾患については、放射線との関連を示す証拠はほとんどなかった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34669562/

 

 

 

Newsletter 2022112日号

 

福島事故

防護理論

医療被ばく

線量評価

 

Trajectory and factors of radiation risk perception of students aged 10-12 years at the time of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident

K Yasui, et al.

J Radiol Prot. 41,1166 (2021)

本研究は、事故当時小学校5年生と6年生であった18-20歳の学生を対象に、放射線リスクに対する認識を調査した。調査対象は、福島県内の生徒と県外の生徒で、事故当時福島県内に住んでいた人は59%、県外に住んでいた人は41%であった。軌跡分析の結果、2011年以降の不安度の経年変化は、5つのクラスに分けられることがわかった。不安の程度は、学業コースと関連していたが、放射線に関する主観的知識とは関連していなかった。ほとんどの若者は放射線に対して不安を抱いていなかったが、約20%はまだ強い不安を抱えていた。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34034244/

 

Compensatory Considerations for Radiological Emergency Response and Public Protective Actions during the COVID-19 Pandemic

AE Leek, JD Semancik

Health Phys. 122(2),333 (2022)

現在のCOVID-19パンデミックは災害に対応した大規模なコミュニティ避難の実施に大きな公衆リスクをもたらす。米国環境保護庁の防護措置ガイダンス(PAG)は、放射線緊急事態に対する公衆および緊急作業員の防護措置の標準的な基礎として広く受け入れられているが、それは主に放射線要因のみに関連するリスク評価に基づいている。今日、COVID-19のパンデミックは、公衆および緊急作業員の適切な保護行動の決定を行う上で、放射線リスクと並行して考慮されなければならない重大な公衆衛生リスクを表している。著者らは、それぞれの管轄区域の放射線緊急対応計画のより具体的なガイダンスを作成し、公衆衛生と安全を最大限に保護するための防護措置決定の検討プロセスの概要を説明する。

https://journals.lww.com/health-physics/Abstract/9000/Compensatory_Considerations_for_Radiological.99625.aspx

 

Analysis and results from a UK national dose audit of paediatric CT examinations

M Worrall, et al.

Br J Radiol. 95(1129),20210796 (2022)

小児CT検査における英国全国患者被ばく線量監査の結果を報告し、英国の診断参考レベル(DRL)の更新を提案した。データの分析から、0-<1歳、1-<5歳、5-<10歳、10-<15歳の年齢範囲における頭部CT検査のDRLを提案することが適切であることが示された。これにより、DRLの年齢区分が現在より拡大され、既存の値が下方修正される。胸部CT検査については、5-<1515-<3030-<5050-<80kgの体重範囲について、英国で初めてDRLを提案することが適切である。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34767475/

 

Dose assessment for polonium-210 (Po-210) in New Zealand shellfish

S Guy, et al.

J Environ Radioact. 242,106788 (2022)

自然放射性核種 Po-210は食品を介した人の内部被ばくの重要な原因である。貝類中のPo-210によるニュージーランド人の線量評価を実施した。食事モデルによる推定年間線量範囲は4μSvから6070μSvであった。最小線量は、ベースラインのPo-210放射能濃度が貝類で測定された地域に住む貝類消費者集団全体について計算され、最大線量は、貝の放射能濃度が上昇した地域に住む貝の高消費者集団に対して計算されたものである。ニュージーランドの人口の大部分については、推定線量の合計は1000μSvを超えないが、貝類のPo-210放射能濃度が高い地域に住む高貝類消費者の約50年間線量1000μSvを超えた

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0265931X21002605?via%3Dihub

 

Newsletter 20211222日号

 

医療被ばく

線量評価

健康リスク

防護理論

Patient-level dose monitoring in computed tomography: tracking cumulative dose from multiple multi-sequence exams with tube current modulation in children

A.   Tabari, et al.

Pediatr Radiol. 51,2498-2506 (2021)

管電流を変調しながら行われる小児腹部CT検査を受ける小児では、CTDIvolSSDEを加算して累積線量を得ることは不正確である。新しい線量指標として患者サイズ別のz軸線量プロファイルとその線量線積分(dose line integral )を導入し、従来の指標と累積線量の計算と比較した。線量線積分は、すべての小児で著しく過小評価したDLPよりも、全体的なエネルギー吸収を特徴づけるのに有利である。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34532817/

 

Japanese pediatric and adult atomic bomb survivor dosimetry: potential improvements using the J45 phantom series and modern Monte Carlo transport

KT Griffin, et al.

Radiat Environ Biophys. 2021 Oct 30, Online ahead of print

広島・長崎の原爆被爆者の被曝線量推定値に、J45ファントムシリーズと呼ばれる新しい解剖学的モデルを導入し、年齢分解能、性別の区別、解剖学的リアリズム、臓器線量の利用可能性を向上させ、放影研で現在使用されているものを改善した。全体として、更新されたファントムシリーズは、活性骨髄,結腸,胃壁を含むいくつかの重要な臓器の線量改善をもたらすと期待される。この影響は、特に中性子線量の推定値と、以前のファントムシリーズでは利用できなかった臓器において顕著であった。

https://link.springer.com/content/pdf/10.1007/s00411-021-00946-2.pdf

 

Quantitative Bias Analysis of the Association between Occupational Radiation Exposure and Ischemic Heart Disease Mortality in UK Nuclear Workers

F Vocht, et al.

Radiat Res. 196(6),574-586 (2021)

英国の核燃料サイクル作業者の大規模コホートにネストされたマッチドケースコントロールデータのこれまでの解析では、外部放射線量と虚血性心疾患(IHD)死亡リスクとの間に観察された関連性が、就業前の喫煙、BMI、血圧、社会経済状態、過度の騒音や交代勤務への職業被ばくによる交絡で説明できるという証拠がほとんど存在しないことが示唆された。観察された外部被曝線量とIHD死亡率との関連についての因果推論を改善するために、非ランダム誤差の大きさと方向を推定し、感度分析を組み込んで、もっともらしいシナリオの下でバイアス効果をシミュレーションした。解析結果は、外部放射線被曝とIHD死亡率との間に観察された関連は因果関係があるかもしれないという仮説をさらに支持した。

https://bioone.org/journals/radiation-research/volume-196/issue-6/RADE-21-00078.1/Quantitative-Bias-Analysis-of-the-Association-between-Occupational-Radiation-Exposure/10.1667/RADE-21-00078.1.full

 

A Modification to the Situation-based Scheme for Sorting Exposures Proposed in ICRP Publication 103

YC Chi

Health Phys. Nov.29,2021, Ahead of Print

国際放射線防護委員会(ICRP2007年勧告は、プロセスベースのアプローチから状況ベースのアプローチ(計画、既存、緊急)への進化を導入した。しかし、多くの場合、どのカテゴリーにも容易に当てはまらない状況が存在する。放射線防護コミュニティにとって、より合理的な状況ベースのアプローチに貢献するために、著者は、被ばく状況の枠組みを、計画的、非計画的、自然発生的な被ばく状況に分類することで、起こりうる分類の問題を解決するのに役立つと提案している。

https://journals.lww.com/health-physics/Abstract/9000/A_Modification_to_the_Situation_based_Scheme_for.99627.aspx

 

 

Newsletter 2021128日号

 

福島事故

環境影響

リスコミ

健康リスク

 

 

Estimation of the Thyroid Equivalent Doses to Residents in Areas Affected by the 2011 Fukushima Nuclear Disaster Due to Inhalation of 131I Based on Their Behavioral Data and the Latest Atmospheric Transport and Dispersion Model Simulation

E. Kim, et al.

Health Phys. Nov.29,202, Ahead of Print

本研究は、WSPEED ver.2を用いた最新の大気輸送・拡散モデルシミュレーションと個人の行動データを用いて、浪江町の住民の131I吸入による甲状腺等価線量の推定をした。事故から数か月後にホールボディカウンターによる直接測定を受け、個人の行動データを提供した住民1,637名を対象とした。その結果、50mSvを超えた16人を除く、迅速避難者1,249人と遅発避難者388人の90パーセンタイルの線量は、それぞれ3.9mSv(大人)-6.8mSv(10)24.1mSv(大人)-35.6mSv(5)であった。避難が早かったグループと遅かったグループの1歳児(被験者に含まれていない)に対する90パーセンタイル(括弧内は中央値)は、それぞれ8.11.0mSv36.319.7mSvであった。しかし、今回の線量推定は、個人レベルでの不確実性が大きいため、さらなる検証が必要である。

https://journals.lww.com/health-physics/Abstract/9000/Estimation_of_the_Thyroid_Equivalent_Doses_to.99628.aspx

 

Visualization of radiocesium distribution in surface layer of seafloor around Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant

Y Sanada, et al.

Sci Rep 11(23175),2021

本研究では、FDNPP周辺の表層堆積物中の放射性セシウム分布を、曳航式ガンマ線検出装置による定期的な調査データを用いて、放射性セシウム濃度マップとして可視化した。曳航式放射線探査を用いて作成した地図は、137Cs濃度分布を1kmメッシュの位置分解能で表現している。

https://www.nature.com/articles/s41598-021-02646-9

 

Review of engagement activities to promote awareness of radiation and its associated risk amongst the Japanese public before and after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident

A Sakoda, et al.

J Radiol Prot. 41(4), 1258, 2021

2011年の福島第一原子力発電所事故後、多くの放射線専門家は、リスクコミュニケーションにおける放射線の理想的な公衆理解と現実の公衆理解の間に大きなギャップがあることを直接経験した。そこで本研究では、社会的に中立な専門家集団であると思われる日本の6つの放射線関連学会が、事故の前後に行った放射線とそのリスクに関するPU活動の情報を集約しレビューした。(保健物理学会専門研究会の成果)

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34816800/

 

Reanalysis of cancer mortality using reconstructed organ-absorbed dose: J-EPISODE19912010

H Furuta, et al.

J Radiol Prot. 2021, Nov.21, Online ahead of print.

J-EPISODEでは、最近の線量計の使用方法や日本人の体格を考慮して、記録線量を臓器吸収線量に置き換えて、J-EPISODEにおけるがん死亡率の過剰相対リスク(ERR)を再解析した。これまでに明らかになったJ-EPISODEの最も重要な特徴は、喫煙調整によってERR/Svが減少する傾向にあることである。大腸、前立腺、腎臓などの泌尿器系臓器の推定値は喫煙調整後もほぼ同じであるが、肺がんや胃がんなどのほぼすべての死因で、喫煙調整により推定ERR/Gyが減少した。この傾向は、臓器吸収線量を用いても変わらず、今後のリスク解析に臓器吸収線量を用いることが適切であることを示している。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34801992/

 

Non-cancer disease prevalence and association with occupational radiation exposure among Korean radiation workers

S Park, et al.

Sci Rep. 11(1),22415 (2021)

放射線によるがん以外の疾患に関しては、低線量でのリスクの証拠は不明である。我々は、韓国の放射線作業者における非がん疾患の有病率に関する基本的な特徴を明らかにし、放射線量との関連を調べることを目的とした。全国規模のベースライン調査により、20,608人の放射線作業者を対象とした。放射線量はほとんどの疾患の有病率上昇と関連していたが、交絡因子を調整すると、筋骨格系疾患(有病率オッズ比[POR]/10mSv1.0395%信頼区間[CI]1.00-1.07)と白内障(POR/10mSv1.0495CI 1.00-1.07)を除き、関連性は弱まり、有意ではなかった。より多様な交絡因子が関与するこれらの非がん疾患の因果関係については、さらなる研究が必要である。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34789809/

 

 

Newsletter 20211124日号

 

医療放射線

健康リスク

福島事故

 

Radiation protection education using virtual reality for the visualisation of scattered distributions during radiological examinations

T Fujibuchi

J Radiol Prot 41(4),S317,2021

医療施設では放射線業務従事者は、散乱した放射線から自分自身や他者を適切に保護する方法を理解する必要がある。本研究では,X線撮影室,コンピュータ断層撮影室(CT),血管撮影室における散乱放射線の広がりを理解しやすくするための可視化手法を検討し,放射線防護教育への応用を提案した。ビジュアライゼーションの手法により、放射線検査室における3次元および4次元の散乱放射線分布を可視化することで、目に見えない放射線の広がりや、適切な放射線被ばくの低減方法についての理解を直感的に深めることができる。

https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/ac16b1

 

Effects of species and geo-information on the 137Cs concentrations in edible wild mushrooms and plants collected by residents after the Fukushima nuclear accident.

M Komatsu, S Hashimoto, T Matsuura

Sci Rep. 2021 Nov 17;11(1):22470.

福島第一原子力発電所(FDNPP)の事故後、周辺地域の野生の食用キノコの濃度特性を明らかにするために、FDNPPから1230km離れた川内村の住民が食品検査のために持ち込んだ食用林産物の137Cs放射能データを2012年から2019年まで分析した。137Cs濃度を推定するベイズモデルを構築した。航空機サーベイに基づく放射性セシウムの沈着量あたりみたキノコ類の濃度である正規化濃度(NCsp)のパラメータは、以前の研究で得られた同種の濃度と類似していた。NCsp値は種によって大きく異なるが、菌根性のキノコはNCsp値が高い傾向にあり、次いで樹液性のキノコが高く、野生の食用植物の値は低かった。村の小さい行政単位の位置情報を考慮したモデルでは、位置情報を考慮しないモデルに比べて、個々のサンプルの誤差が40%減少し、詳細な地理情報が推定精度を向上させていることがわかった。

https://www.nature.com/articles/s41598-021-01816-z

 

Machine learning analysis of 137Cs contamination of terrestrial plants after the Fukushima accident using the random forest algorithm

Igor Shuryak

J Environ Radioact. 2021 Nov 9; Online ahead of print

福島原子力発電所の事故後の陸生植物の放射能汚染は、植物の種類、事故後の時間、気候など、複数の要因に影響される。福島原発事故後の放射性物質による汚染に関する複合データを、ランダムフォレスト(RF)などの機械学習アルゴリズムを用いて分析を行なった。公表されている2つの大規模データセットを対象とした。目的は、陸生植物における137Cs汚染の主な傾向を特定し、定量化するための機械学習の有用性を示すこと。大規模データの機械学習分析の結果は、これまでのモデル化の努力を補完し、福島事故後のプラントの137Cs汚染のパターンを明らかにするのに役立つ。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34768117/

 

An Enriched Environment Alters DNA Repair and Inflammatory Responses After Radiation Exposure

S Sakama, et al.

Front Immunol. 2021 Oct 22;12:760322.

東京電力福島第一原子力発電所の事故などの災害による長期避難所や仮設住宅での生活は、不快なストレスをもたらし、心身の健康に悪影響を及ぼす可能性がある。豊かで快適な「eustress」が健康に良い影響を与えることは、マウスモデルを用いた実験で明らかになっている。本研究では、EEが放射線照射後の発がんを抑制するかどうかを評価するために、マウスモデルを用いて、血清レプチン濃度、放射線によるDNA損傷反応および炎症反応を評価した。その結果、放射線照射前のEE飼育は、放射線によるDNA損傷への反応性や基礎免疫力を向上させ、さらに慢性炎症反応を抑制することが確認され、放射線による発がんリスクの低減につながる可能性が示唆された。

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2021.760322/full

 

 

Newsletter 20211111日号

 

Chernobyl事故

健康リスク

福島事故

 

Estimation of radiation gonadal doses for the AmericanUkrainian trio study of parental irradiation in Chornobyl cleanup workers and evacuees and germline mutations in their offspring

V Chumak, et al.

J Radiol Prot. 41,764, 2021

米国国立がん研究所-国立放射線医学研究センターのトリオ(父、母、子)研究 (Science2021)で、子供の生殖細胞のde novo突然変異に対する放射線の影響やその他の結果を調べることを目的として、除染作業員や避難民としてチョルノブイリ事故で被ばくした両親の生殖腺線量を推定した。

https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/abf0f4/pdf

 

Breast cancer risk in residents of Belarus exposed to Chernobyl fallout while pregnant or lactating: standardized incidence ratio analysis, 1997 to 2016

Int J Epidemiol 2021 Oct 23; Online ahead of print.

EK Cahoon, et al.

チェルノブイリ事故後2カ月以内に妊娠または授乳中で、ベラルーシの汚染地域に居住していた女性3214人のコホートにおける乳がんの発生率を調べた。年齢、州、都市部/農村部の居住地、暦年を調整して標準化罹患比(SIR)と95%信頼区間(CI)を算出した。授乳中の女性は、一般人口と比較して乳がんのリスクが2倍以上高く、SIR2.4995CI1.55, 3.75)、一方、妊娠中の女性はリスクが高くなかった(SIR0.84 95CI0.461.38)。 授乳期に被曝した女性の個人線量推定値を用いた乳がんの研究が望まれる。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34687542/

 

Mortality among Medical Radiation Workers in the United States, 1965-2016

Int J Radiat Biol. 2021 Nov 3;1-63. Online ahead of print.

JD Boice, et al.

医療従事者を対象とした低線量健康影響に関する百万人調査(MPS)の一環で健康リスクを分析した。 Landauer, Inc.の線量データベースで、1965年から1994年に初めてモニターされた109,019人の医療従事者および関連する放射線従事者を特定し、2016年までの死因を調べた。100mGy当たりの過剰相対率(ERR)は、CLL以外の白血病で0.1095CI -0.340.54)、肺がんで0.150.020.27)、IHD-0.10-0.270.06)と推定された。肺がんのERRは、男性55,218人で0.160.010.32)、女性53,801人で0.09-0.190.36)であり、男女差は統計的に有意ではなかった(p=0.062)。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34731066/

 

 

A modeling approach to estimate 3 H discharge from rivers: Comparison of discharge from the Fukushima Dai-ichi and inventory in seawater in the Fukushima coastal region

Sci Total Environ 2021 Oct 30;151344. Online ahead of print.

K Sakuma et al.

20136月から20203月までの期間に、阿武隈川をはじめとする福島県沿岸地域の13の河川からのH-3排出量を、タンクモデルと河川水のH-3濃度の観測値を基にしたモデルを用いて推定した。2014年~2019年の阿武隈川および福島沿岸地域の他の13河川流域からのH-3排出量は1.24.0 TBq/yと推定された。これらの値は、2016年以降の福島第一原発からの年間H-3排出量の約222倍であり、河川を介した集水域からのH-3排出の重要性が示された。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34728196/

 

Factors controlling dissolved 137Cs activities in coastal waters on the eastern and western sides of Honshu, Japan.

Sci Total Environ 2021 Oct 27; Online ahead of print.

H. Takata, et al.

福島第一原子力発電所(FDNP)事故から710年後の20182021年に、日本の本州の東海岸および西海岸の河川、沿岸、沖合の水域における溶存Cs-137の分布を調査した。北太平洋(福島県)に沿った東側では、河川の粒子からの脱着や溶解などの河口プロセスが、近海や沖合での高い溶存Cs-137の放射能の維持に寄与し、河川が沿岸水域へのCs-137の流入に寄与していることが明らかになった。対照的に、日本海の近海および沖合での溶存型Cs-137の増加に、河川からのCs-137の流入がほとんど寄与していないことが示唆された。このように、日本の東側と西側の沿岸水域におけるCs-137の分布を支配するメカニズムは異なっている。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34717992/

 

 

Newsletter 20211027日号

 

福島事故

健康リスク

線量計測

Vulnerability of Evacuees Having No One to Consult after the Fukushima Nuclear Disaster: The Fukushima Health Management Survey

N.Horikoshi, et al.

Int J Environ Res Public Health 18(19),10075,2021

2011年の東日本大震災による福島原子力発電所の事故では、多くの医療関係者が支援を申し出たにもかかわらず、避難者の中には誰にも相談できない人がいた。本研究は、福島県の被災地に住む16歳以上の32,699名を対象として、相談相手がいない人は心理的苦痛(16.2%、p0.001)と飲酒問題(21.5%、p0.001)の有病率が有意に高いことがわかった。多変量解析の結果、これらの行動は、中年層(4064歳)(オッズ比[OR]1.3095%信頼区間[CI]1.161.46)、男性(OR2.4695CI2.272.66)、経済状況の悪さ(OR2.1195CI1.962.27)、一人暮らし(OR1.5395CI1.391.68)と関連していることがわかった。

https://www.mdpi.com/1660-4601/18/19/10075

 

Emergency Hospital Evacuation From a Hospital Within 5 km Radius of Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant: A Retrospective Analysis of Disaster Preparedness for Hospitalized Patients

T Sawano, et al.

Disaster Med Public Health Prep. 2021 Oct 14, Online ahead of print.

2011311日の原発事故の直後に、福島第一原子力発電所(FDNPP)の周辺住民に避難命令が出た。FDNPPから西に4.6km離れた双葉病院に入院していた338名の患者のうち、39名(11.5%)は重症で寝たきりの患者や体の不自由な患者が多く、避難が完了する前に死亡した。病院スタッフの不足やインフラの崩壊により、輸液や喀痰吸引などのケアが十分に行われなかったため、緊急の病院避難中に入院患者の一部が早死にした。災害時には病院からの避難が避けられないこともあるため、病院からの避難は潜在的な健康を認識し、災害対策計画に反映させる必要がある。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34645542/

 

Lifetime Risk Assessment of Lung Cancer Incidence for Nonsmokers in Japan Considering the Joint Effect of Radiation and Smoking Based on the Life Span Study of Atomic Bomb Survivors

K Shimada, M Kai

J Radiat Prot Res. 46(3),83-97 (2021)

非喫煙者の放射線による肺がん発生の生涯リスクは、喫煙者を含む混合集団における平均的ながんのベースラインリスクを使用しているため、過大評価される。現在の喫煙データを用いて非喫煙者のベースラインリスクを推定する簡単な方法を提案し、ベースラインリスクの推定について感度分析を行った。今回の研究では、喫煙者と非喫煙者を区別しない混合集団のがんベースライン統計を使用すると、日本人男性の非喫煙者の肺がんのリスク評価が2倍に過大評価されることが示された。

https://www.jrpr.org/journal/view.php?number=1090

 

Radiation Safety Exploration Using Radio-photoluminescence Dosimeter for Crookes Tubes in Junior and Senior High School in Japan

M Akiyoshi, et al.

J Radiat Prot Res. 46(3),106-111 (2021)

クルックス管は、日本の中学・高校で電子や電流の性質を学ぶために利用されているが、公的なガイドラインや規制はない。日本の中学・高校などの教育現場における38本のクルック管からの低エネルギーX線の各漏洩線量をラジオ・フォトルミネッセンス(RPL)線量計を用いて調査した。その結果、31本のクルック管からのX線のHp(0.07)は、1mの距離で10分間に100μSvより小さいと推定されたが、一部の機器はより高い線量が測定された。本研究ではクルック管の安全運用のための暫定的なガイドラインを提案した。

https://www.jrpr.org/journal/view.php?number=1091

 

 

Newsletter 20211013日号

 

医療職業被ばく

福島事故

健康リスク

ラドン

医療被ばく

Association of occupational direct radiation exposure to the hands with longitudinal melanonychia and hand eczema in spine surgeons: a survey by the society for minimally invasive spinal treatment (MIST)

Y. Hijikata, et al.

Eur Spine J. 2021 Aug 24. Online ahead of print.

脊椎外科医における職業上の手指への被ばくと爪の色素沈着である縦走性黒色斑(LM)および手指湿疹との関連日本低侵襲脊椎治療学会対象としたウェブ上のアンケート調査を行った。直接被ばくが多い手の群(高被ばく群)と少ない手の群(対照群)に分け、高被ばく群の手におけるLMと手湿疹の有病率の調整オッズ比3.1895CI2.24-4.52)、手指の湿疹は調整後のOR2.2695CI1.67-3.06)であった。本研究では、医師の手の被ばくがLMおよび手湿疹と関連することが示唆された。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34427761/

 

Backward Estimation of Atmospheric Release of 137Cs and 131I Using Total Cumulative Deposition in Terrestrial Areas Following the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident

M Iijima, S Takahara

Health Physics 2021 Sep 24. Online ahead of print.

大気輸送モデル、拡散モデル、沈着モデルの計算を組み合わせることにより、入手可能な総累積沈着密度に基づいた新しい後向き推定法を開発した。その結果、事故後の2011315日、20日、21日、22日、25日、30日にCs-137I-131の大規模な放出があったことが推定された。新しい手法で推定されたCs-137I-131の放出量は、それぞれ4.9×10^15Bq120×10^15Bqであった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34570050/

 

Organ Dose Reconstruction Applicable for a Japanese Nuclear Worker Cohort  J-EPISODE

H Furuta, et al.

Health Physics  2021 Nov 1;121(5):471-483.

線量計の数値から臓器吸収線量への換算係数を、時代、原子力施設の種類、線量計の種類、組織または臓器別に推定した。日本の原子力作業者疫学調査のコホートであるJ-EPISODEに用いる臓器吸収線量換算係数を再構築し、今後、臓器吸収線量を用いてがんの死亡率や罹患率のリスクを評価に利用される。

https://journals.lww.com/health-physics/Fulltext/2021/11000/Organ_Dose_Reconstruction_Applicable_for_a.4.aspx

 

External background ionizing radiation and childhood cancer: Update of a nationwide cohort analysis

A Mazzei-Abba, et al.

J Environ Raioact. 2021 Nov;238-239:106734, Epub 2021 Sep 11

スイスの全国規模の国勢調査に基づくコホート研究により、小児がんの発生率と外部自然放射線からの被ばく線量との関連を調べた。これまでの研究の追跡期間を延長し、被ばくモデルを改良した最新結果を提供している。潜在的交絡因子の調整は、結果にほとんど影響を与えなかった。外部自然放射線が白血病および中枢神経系腫瘍のリスクに寄与することを示唆した。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0265931X2100206X?via%3Dihub

 

Rising Canadian and falling Swedish radon gas exposure as a consequence of 20th to 21st century residential build practices

SM Khan, et al.

Sci Rep. 2021 Sep 2;11(1):17551.

ある期間に建てられた住居の平均的なラドン濃度は、時代や地域によって異なるが、その根本的な理由は明らかになっていない。本研究は、1945年以降に建てられたカナダの25,489戸とスウェーデンの38,596戸の住宅の長期にわたるラドン調査と建物を分析した。1970年代および1980年代に建てられたカナダの住宅とスウェーデンの住宅は、同程度のレベル(96103Bq/m^3)であったが、その後、カナダでは上昇し、スウェーデンでは低下し、2010年代および2020年代に建てられたカナダの住宅のラドンレベルは、同程度のスウェーデンの住宅(28Bq/m^3)よりも467%高かった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34475435/

 

Cumulative radiation doses from recurrent PETCT examinations

Br J Radiol. 2021 Oct 1;94(1126) Epub 2021 Jul 8.

M Hosono, et al.

陽電子放出断層撮影法(PET-CT)の実施件数は世界中で増加している。CTによる被ばくに比べて、PET-CT検査を繰り返し受けることで累積実効線量が100mSv以上になる患者の頻度についての報告はほとんどない。新たに登場した線量追跡システムは、PET放射性医薬品とCTの被ばく量を簡単にまとめることができ、PET-CTによる患者の医療被ばくについて考察した。

https://www.birpublications.org/doi/10.1259/bjr.20210388

 

 

Newsletter 2021922日号

原子力災害対策重点区域に対する避難時間推計の日米の比較分析
嶋田 和真 他

JAEA-Review 2021-013
日本及び米国で実施されたETEの公開資料をレビューし、日本のETEの課題を検討した。さらに、米国原子力規制委員会のNUREG/CR-7002に基づいて、米国の原子力施設周辺の緊急時計画区域に対するETEの概要を整理した。そして、内閣府(原子力防災担当)ETEのガイダンスに基づいて、予防的避難を準備する区域及び緊急時防護措置を準備する区域に対する日本のETEの概要を整理し、米国のETEと比較した。

https://jopss.jaea.go.jp/search/servlet/search?5071402

 

 

Newsletter 202198日号

Dialogue as therapy: the role of the expert in the ICRP Dialogues.
Takahashi M.

Ann ICRP. 2021 Aug 13:1466453211033758.
科学コミュニケーションは、しばしば欠如モデルであることが批判される。福島第一原子力発電所事故後のICRPダイアログセミナーは、この伝統的なスタンスから一歩進む取り組みであることを著者は述べ、エスノグラフィーの手法を用いて、専門家と被災者が関わる参加型セミナーのあり方を考察。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34384264/

 

 

Newsletter 2021825日号

Prenatal X-ray Exposure and the Risk of Developing Pediatric Cancer-A Systematic Review of Risk Markers and a Comparison of International Guidelines
F. Wit, et al.

Health Phys. 2021 Sep 1;121(3):225-233.
最初のOxford Survey of Childhood Cancerが発表されて以来、診断用X線による出生前の被ばくに関連するリスクが認識された。その後、多くの研究が行われ、このレビューでは、最近の疫学研究の結果をまとめている。ほとんどの国際的なガイドラインは、比較可能で、かなり保守的なリスク係数を提供しており、妊婦の腹部検査を推奨していない。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34261894/

Medical application of particle and heavy ion transport code system PHITS
T Furuta, T Sato

Radiol Phys Technol. 2021 Jun. Online ahead of print.
Particle and Heavy Ion Transport code System
PHITS)は、汎用のモンテカルロシミュレーションコードであり、様々な種類の放射線治療への応用、遮蔽計算、放射線生物学への応用、医療機器の研究開発など、様々な分野で応用されている。本論文は,様々な医療応用の実例を挙げながら、PHITSの有用な機能を解説する。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34195914/

Issues in Radiation Nursing Education in Japan Before and After the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident
T. Horiuchi, et al.

Disaster Med Public Health Prep.  2021 Aug 16;1-5. Online ahead of print.
福島第一原子力発電所事故に対する日本の看護師の対応は不十分であったと指摘されている。本研究では、日本の看護基礎教育機関1053校の管理者と教員を対象に質問紙調査を行い、放射線看護教育の課題を検討した。日本の看護教育では原子力災害への対応が困難であり、現在の看護教育システムを検証し、原発事故の経験を踏まえた新たなモデルを構築することは喫緊の課題である。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34396951/

Methodological improvements to meta-analysis of low dose rate studies and derivation of dose and dose-rate effectiveness factors
MP Little, et al.

Radiat Environ Biophys. 2021 Aug;60(3):485-491. Epub 2021 Jul 4.
ここ数年、低線量率職業研究で観察されたリスクと、日本の原爆被爆者の年齢・性別を適切に調整した解析結果を直接比較することにより、線量率の外挿の効果を評価する試みがなされている。この論文では、低線量率の研究で推定された過剰相対リスクと日本の原爆被爆者の過剰相対リスクとの比を比較する際の潜在的な統計的問題、特に、この比には明確に定義された平均値と理論的に束縛されない分散が存在しないことについて議論した。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34218328/

 

 

Newsletter 2021811日号

Keeping the ICRP recommendations fit for purpose
Clement C. et al.

J. Radiol. Prot. 2021 Jul 20, Online ahead of print
ICRP
は、2007年勧告を更新する「放射線防護システム」の改訂に着手した。本稿の目的はどの分野を見直すことが最も効果的であるかについて議論を促し共同作業を開始し意見を求めるためである。
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/ac1611

New NASA radiation standards for astronauts seen as leveling field for women
Anil Oza

Science, Latest News, Jun. 29, 2021
6
24日に発表された米国科学・工学・医学アカデミーの報告書は、NASAが宇宙飛行士の放射線被曝に関する基準を改訂する計画を支持し、すべての宇宙飛行士の放射線量を生涯で600ミリシーベルトに制限するという新しい基準を勧告した。現在の基準値は、放射線がん死亡リスクが3%増加する線量で、提案された基準では性と年齢に関係なく全ての宇宙飛行士が35歳の女性の許容線量に制限する。
https://www.sciencemag.org/news/2021/06/new-nasa-radiation-standards-astronauts-seen-leveling-field-women

Development of skeletal systems for ICRP pediatric mesh-type reference computational phantoms
Chansoo Choi et al

J. Radiol. Prot. 41 139, 2021
ICRP
が開発したメッシュ型ファントムは複雑な骨や小さな骨の解剖学的構造を大幅に改善した。放射線に敏感な骨格組織(骨髄と骨内膜)の平均吸収線量と比吸収割合を比較した。比較の結果,透過性の高い放射線の線量値はボクセル型の線量値と類似したが、透過性の低い放射線は、最大で140倍もの大きな差が見られた。
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/abd88d

Re-examining the role of tissue inflammation in radiation carcinogenesis: a hypothesis to explain an earlier onset of cancer
Nakamura, N.

Int J Radiat Biol  2021 Jul 16;1-26. Online ahead of print
放射線発がんの突然変異誘発モデルは、放射線照射後にマウスの生存曲線が若年化するという観察された線量依存的な平行移動を説明できない。この可能性のあるメカニズムとして、自然発生癌の早期発症を促す様々な種類の組織損傷の放射線誘発を検討した。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34270352/

Long-term observation of mortality among inpatients evacuated from psychiatric hospitals in Fukushima prefecture following the Fukushima nuclear disaster.
Terui, T. et al.

Sci Rep. 2021 Jul 19;11(1):14651.
福島第一原子力発電所の事故直後に避難した精神科入院患者の長期予後との関連をこのレトロスペクティブコホート研究で事故直後に病院から避難した777名を解析対象とした。生存期間を単変量解析および多変量解析を行い、死亡率と避難の直線距離、および精神科/身体的特徴を含む異なる背景との関連を検討した。避難距離が長いほど、ハザード比が有意に低く、死亡率が低いことが示された。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34282221/

 

Newsletter 2021728日号

 

The IRPA Young Generation Network: Activity Report from the Middle of 2018 to the Beginning of 2021
Sylvain Andresz et al.

Journal of Radiation Protection and Research, Published online (in press)
2018
年の創設以来、IRPA YGNIRPA若手ネットワーク)は、放射線防護や関連分野の学生や若手専門家間の国際的協働を進めるために、様々な活動を行ってきた。本稿では、「Joint JHPS-SRP-KARP Workshop of Young Generation Network (2019年日本)」、「Nuclear Energy Agency Workshop on Optimization: Rethinking the Art of Reasonable (2020年ポルトガル);「放射線防護分野の若手におけるCOVID-19の影響調査2019」、「IRPA152021年オンライン開催)」を中心に、近年の活動報告を紹介する。
https://www.jrpr.org/journal/view.php?number=1088

 

Validity of the source term for the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Station accident estimated using local-scale atmospheric dispersion simulations to reproduce the large-scale atmospheric dispersion of Cs-137
M Kadowaki, et al.

J Environ Radioact 2021 Jul 26;237:  Online ahead of print.
福島第一原子力発電所(FDNPS)事故による137Csのソースタームは、局所スケールの大気拡散シミュレーションと測定結果から推定された。このソースタームが137Csの大規模な大気拡散を再現する上で有効であることを確認するため、半球スケールの大気・海洋拡散シミュレーションを行い、ソースタームは、FDNPS事故による137Csの時空間分布を、局所的な大気拡散シミュレーションと大規模な大気拡散シミュレーションの両方で再現できることがわかった。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34325219/

 

Assessing the impact of large-scale farmland abandonment on the habitat distributions of frog species after the Fukushima nuclear accident

N Matsushima, et al.

Oecologia 2021 Jul 27. Online ahead of print.
2011
年の東京電力福島第一原子力発電所の事故後、大規模な水田放棄がカエルの生息地に与える影響を明らかにするため、水田で繁殖する4種のカエルの分布の変化をニッチモデルと現地調査で調べた。本研究では、ニッチモデリングとフィールド調査の組み合わせが事故後の種の反応を予測するのに有効であることを示した。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34313837/

 

The Health Physics Society's 'Ask-The-Expert' feature: widening public support through empathy and science
E Caffrey, J Caffrey

J. Radiol. Prot. 41 S39,2021
パブリックコミュニケーションと共感は、保健物理学と放射線防護のコミュニティが今日直面している最も重要な課題の一つ。この論文では、米国保健物理学会のAsk The ExpertATE)がどのように機能するか、ATEが使用する基本原則を保健物理学コミュニティ全体でどのように適用できるのかに焦点を当て紹介した。
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/abf720

 

Effects of Chronic Low-Dose Internal Radiation on Immune-Stimulatory Responses in Mice

Abrar UH Khan, et al.

Int J Mol Sci  2021 Jul 7;22(14):7303.
本研究では、FVB/N-Tg(MMTVneu)202Mul/Jトランジェニックマウスの乳がんの発生と進行に対する低線量の影響を調べた。トリチウム入り飲料水を介して総線量101002000mGyを慢性的に被ばくさせ,3.568カ月齢で評価した。その結果、低線量によって、免疫活性化を示す分子および細胞の免疫パラメータに複数の有意な変化が生じることを示した。しかし、これらの変化は低線量の慢性トリチウム曝露はマウスの全体的な腫瘍量には影響しなかった。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34298925/

 

 

Newsletter 2021714日号

 

Estimation of the Early Cs-137 Intake of Evacuees from Areas Affected by the 2011 Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident Based on Personal Behavioral Data and the Latest Atmospheric Transport and Dispersion Model Simulation

K Eunjoo, et al.

Health Phys. 2021 Aug 1;121(2):133-149
浪江町住民のWBC測定で観測された体内残留セシウム量を避難の状況で分析すると、2011312日に避難した時間帯によって大きく異なることが明らかになっている。そこで、本研究は、成人と15歳(13-17歳)の被験者356名を対象に、避難者の個人行動データと最新の大気輸送・拡散モデル(ATDM)のシミュレーションを組み合わせて被ばく状況を再現し、この事実を検証した。その結果、これまでの知見が裏付けられた。しかし、この方法で算出された残留セシウム-137の体内含有量は、被験者のWBC測定値の10%~20%に過ぎなかった。
https://journals.lww.com/health-physics/Fulltext/2021/08000/Estimation_of_the_Early_Cs_137_Intake_of_Evacuees.7.aspx

Dose Estimation for the European Epidemiological Study on Pediatric Computed Tomography (EPI-CT)
Isabelle Thierry-Chef, et al.

Radiat Res (2021) 196 (1): 74?99.
本研究は、欧州9カ国でCT検査を受けた約100万人の小児、青年、若年成人からなるEPI-CT研究のコホートの臓器線量を推定した。CT装置の設定に関するデータは、国の調査、アンケートデータ、および437,249件のCTスキャンのDICOMヘッダーから得た。1990年代前半には、頭部CTから脳が受ける線量は比較的高く、個人の平均線量は1スキャンあたり最66mGy1990年代後半から最適化により、特に若年層において、時間の経過とともに全体的に線量が減少している。胸部CTでは、1991年以前には15mGyを超えていた骨髄線量が、2001年以降は1スキャンあたり約5mGyまで低下した。今回の結果は、疫学調査における放射線誘発リスクの推定に利用する線量推定値を提供するものである。
https://meridian.allenpress.com/radiation-research/article/196/1/74/464694/Dose-Estimation-for-the-European-Epidemiological

Korean-specific biokinetic model for iodine in radiological protection

Tae-Eun Kwon, et al.

J Radiol Prot. 2021 Jun 1;41(2).
安定ヨウ素摂取量の多い韓国人(1100-6600μg/day)について、安定ヨウ素の摂取量に依存する放射性ヨウ素のICRPの体内動態モデルを拡張した。ICRP基準モデルと比較して、韓国モデルでの速度定数は、ホルモン分泌はICRPの値と同程度であるが、甲状腺への取り込みが顕著に低く、甲状腺のヨウ素の減少が早いことが予測された。
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/abd842

Radiation protection perspective to recurrent medical imaging: what is known and what more is needed?
Jenia Vassileva, et al.

Br. J Radiol. 2021 Jun 23;20210477.  Online ahead of print.
本レビューは、放射線画像の再撮影とそれに伴う患者の累積線量に関する現在の知見をまとめている。最近の保守的な推定では、がんのリスクを高める証拠がある100mSv以上の放射線量を累積する患者は、世界で約90万人とされている。そのうち約5人に150歳以下と推定されている。放射線防護の枠組みは、再撮影や個人の高線量という課題に対応する必要があり、放射線防護の視点は臨床の視点を補完するものである。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34161167/